
成長が期待される未上場企業に資金を提供し、企業の成長とともに利益を得る「ベンチャーキャピタル(VC)投資」。一部の投資家のあいだで密かに進められているこの投資は、従来とは異なる価値観や判断軸が重視されているようです。Keyaki Capital株式会社の木村大樹代表取締役CEOが、米国のネットワーク型VCの実例も踏まえながら、いま注目を集める「VC投資」のしくみと、VC投資が秘める可能性について解説します。
信頼関係が“資本”に…秘密裏に広まる「VC投資」とは
近年、個人投資家のあいだでプライベートアセットへの投資が拡大しつつあります。なかでも「ベンチャーキャピタル(VC)投資」は、依然として一部の投資家に限られた領域です。
VC投資は、未上場のベンチャー・スタートアップ企業に投資するため、取引は公開市場ではなく、人的ネットワークを通じて非公開に進みます。そのため、投資機会にアクセスできる人が限られているのです。
特に米国では、投資家コミュニティを通じた信頼関係に基づいて案件が動くケースが多くみられます。
つまり、VCの世界では「資金力」だけでなく、“人のつながり”が投資を決定する重要な要素になっているのです。そのため、起業家の事業内容だけでなく、その人物への信頼や紹介者の信用が投資判断に大きく影響します。
米アイオワ大学ほかによる研究(Garfinkel et al., Alumni Networks in Venture Capital Financing, 2025)では、VC投資全体の約3分の1が「投資家と起業家が同じ出身コミュニティに属している案件」であり、こうした案件は成功確率が平均よりも高いと分析されています。
言い換えれば、誰と学び、誰とつながってきたかが、資本の流れを形づくっているのです。
従来型VC構造の“弱点”
従来型の一般的なVCは、主に機関投資家や超富裕層などから資金を募り、専門チームがスタートアップを調査・選別して投資を行っていました。
案件の発掘は、アクセラレーターや業界イベント、人脈紹介などを通じて行われますが、情報の非対称性が大きく、限られた範囲の「目に見える起業家」へ資金が集中しやすい傾向にあります。
また、投資後の支援については、資金提供や取締役派遣など「経営面」が中心で、人材紹介や顧客紹介などの「ネットワーク活用」は担当者個人の力量に左右される部分が大きいのが実情です。
つまり、従来型VCの構造は、資本の出し手と投資先企業、さらには投資家・起業家同士の関係が分断されやすく、ネットワークを価値に変える仕組みが限定的なのです。
