◆調査3日目:18時20分 今夜こっそり彼女のマンションに行ってやろうと
キャリーケースを持った大学生風の男性が降りてきた。「東京‒品川間で新幹線を利用している人に取材してまして、今日はどんな事情が?」
「ああ、はい、まあその……」
言葉を濁してる雰囲気からして何かありそうだ。
「あの…実は彼女が浮気してるかもしれないんですよ」
話によれば、この男性は名古屋在住で、昨日東京に住む彼女の家に遊びに来たらしい。で、先ほど、彼女に東京駅で見送ってもらったのだが、この後、彼女が別の男と会うのではと疑い、品川までの切符しか購入しなかったそうだ。
「浮気を疑う何か証拠はあるんですか?」
「ないんですけど、もう付き合って3年になるんで雰囲気でわかるんですよ。なんか、いつもと違うなって。だから今夜こっそりマンションに行ってやろうと思って」
帰ったと思わせて、不意にピンポーンするってことか。勘違いならいいけど、そこに男がいたら修羅場になること間違いなし。というか、むしろその現場を見てみたい。
◆調査3日目:20時10分 大阪から営業に来たけど1本も契約が取れず、このまま帰るのが怖い
ホームに降りて、すぐベンチに座ったスーツ姿の中年男性が。かなりお疲れの様子だ。「今日はお仕事ですか?」
「せや。大阪から出張で東京まで来ててんけど、50軒回っても1本も契約取れんくてな。大阪帰るつもりやってんけど、しんどーて品川で降りてもうてん」
「営業関係のお仕事で?」
「美容院に北欧製のシャンプーやコンディショナー卸してて、今日は新規開拓に来たんやけど、やっぱ東京の人間は冷たいわ。ホンマどないしょ。啖呵切って出てきた手前、面目たたへんがな」
「素直に謝ればいいんじゃないですか?」
「いやいや、遊びに行っとんたんか! って怒鳴られるのがオチや」
「で、品川で降りてどうするつもりなんですか?」
「いや、まぁ切符も買うたし、大阪帰るんやけど、ちょっと休憩やな」
車内で休まないのは、だんだん大阪が近づくのが怖いかららしい。いずれにしろお疲れさまっす。

