◆決して「キャラ作り」ではない

游子:卸売業者で働かせていただいいたときは、非常に多くのことを勉強させていただきました。何十年もその業界にいる人たちが毎日力仕事をしている姿は、本当に尊敬します。一方で、フィジカル面で劣る女性の私にできる実務には限界があり、より根本の“金魚離れ”を解消するためにできることを考えました。
まだ“娘”を名乗って許されるうちに、自分のパーソナリティやファッションを活用して存在を知ってもらえればと思って、卸売業を半年で退職して上京した経緯があります。ちなみに、よく「タレントとして有名になりたいためのキャラ作り」だと勘違いされるのですが、それはないんですよね。大学の卒業論文も「金魚が出てくる文学作品」をテーマに執筆したほど金魚に心酔していて、指導教授にも知られていました。
――今後、人々にとって金魚がどのような存在になってほしいですか。
游子:何万円もするような金魚を惜しみなく買えるマニアではなくても、300〜3000円くらいの「少し贅沢な金魚」を楽しんでくれる人が増えると嬉しいですよね。それから、可能なら「犬を飼おう」と思ったときに多くの人が犬種でイメージするように、金魚も金魚というくくりで「飼おう」ではなくて、「リュウキンを飼おう」「トサキンを飼おう」というように、種類がポピュラーになるといいですよね。
◆「触ったり撫でたりすること」ができないからこそ…
――金魚の楽しみ方について教えてください。游子:金魚は触ったり撫でたりすることのできないペットです。優雅に泳ぐその姿を、眺めて楽しむしかない。だからこそ、時間がゆったりと流れるんですよね。細部までじっくりと金魚を見つめて、形や鰭の美しさに心を奪われる時間は、贅沢なものです。デジタルデバイスに囲まれる生活のなかに、そうしたひとときがあってもいいのかなと私は思っています。それから、本当に美しい金魚は水のなかで輝くんです。それは、「輝いている」としか表現できないほど圧巻で、見ていて豊かになれるものです。生命の輝きに立ち会う瞬間があると、虜になるのではないかと思っています。

