想像の斜め上を行く、衝撃発言
「先生、私、このマンションに住んでいいですか?」
想像の斜め上を行く、衝撃発言です。実は大輔さんは独身で、経済的にも厳しい状況にありました。そのため、現在の賃貸アパートを解約し、とりあえず雨風をしのぐ場所として、兄が亡くなったマンションに住みたいというのです。
事情を聞けば「兄のマンションに住みたい」という思いは理解できます。しかし、マンションは亡き兄夫婦それぞれの相続人の共有財産です。たしかに大輔さんの兄夫婦の家ではありますが、登記簿上は他人名義の家に住むことになります。
どのような法的な権限のもとに「住む」ことができるのか?
もし法的にNGだったとして、だれか異論を唱えるのか?
管理組合は許可するのか、管理費や修繕積立金を支払っていれば文句はないのか?
固定資産税は誰が払う?
納税さえしていれば、役所はなにもいってこないのだろうか?
そんな疑問が頭を駆け巡ります。
しかし、明確なのは、兄嫁が亡くなったときと、兄が亡くなったときの「2回起きている相続の問題」を解決しない限り、売却処分もできず、担保提供もできないということです。このような不動産に財産的な価値はほとんどありません。
また、3ヵ月の相続放棄の申述期限が切れてしまうと、あとから相続放棄をすることもできません。
「当然リスクがあると思いますが、本当にそれで大丈夫なんですかね…?」
筆者のほうがこんな疑問を投げかけてしまい、正直、法的に明快な回答はできませんでした。
しかし、士業は依頼を受けなければなにも動けません。もうひとりの相談者である姉の千恵さんも「面倒ごとに関わりたくない」とのことだったので、この件は相談だけで終了となりました。
かくして、相談者の大輔さんは、兄が孤独死したマンションに住むことになったのです。
しかし5年後、事態はさらに驚くべき展開を見せることになりました。
*本件は個人情報保護のため、内容は一部改変を加えております。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
