なにかの間違いでは…年金月18万円の68歳男性、日本年金機構から毎年1月に届く〈青色のはがき〉で知ったまさかの事実【CFPが「公的年金等の源泉徴収票」のポイントを解説】

なにかの間違いでは…年金月18万円の68歳男性、日本年金機構から毎年1月に届く〈青色のはがき〉で知ったまさかの事実【CFPが「公的年金等の源泉徴収票」のポイントを解説】

公的年金は、老後の生活を支える収入として、多くの人にとって欠かせない存在です。もっとも、年金制度は改定を重ねて年々複雑になっていることから、“知らずに損をしている人”も少なくありません。「支給される年金額は変わっていないはずなのに、なぜか手取りが減っている」そんな違和感を覚えた68歳男性の事例から、年金制度の注意点「公的年金等の源泉徴収票」の要チェックポイントを見ていきましょう。

毎年1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」の盲点

日本の年金制度では、原則として65歳以降になると、老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給することになります。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、現在の年金の平均受給額は月額およそ15万円でした。

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成 [図表1]老齢年金の平均受給額 出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

また、老後に受け取る年金は課税対象となります。一定額を超えて受給している場合には、所得税や住民税が課される仕組みです。もっとも、年金額は現役時代の収入と比べると減少する人が多く、税負担が過度に重くなるケースは多くありません。

とはいえ、月々の受給額が限られているなかでは、わずかな税金の増加でも生活への影響を感じやすいものです。そのため、利用できる控除はきちんと活用し、不要な税負担をできる限り抑えたいところでしょう。

その際、確認しておきたい書類として「公的年金等の源泉徴収票」が挙げられます。

公的年金等の源泉徴収票とは、年金を受給した人に対して、1年間に支払われた年金の総額や、源泉徴収された所得税額などをまとめて知らせる書類です。毎年1月中旬から下旬にかけて、日本年金機構から送付されます。実物は図表2のような青色のハガキです。

出所:日本年金機構「令和6年分 公的年金等の源泉徴収票」 [図表2]公的年金等の源泉徴収票見本 出所:日本年金機構「令和6年分 公的年金等の源泉徴収票」

この源泉徴収票を確認する際、次の3点をチェックすることが大切です。

チェックポイント1.1年間でいくら年金を受給したのか

チェックポイント2.配偶者控除や扶養控除などが正しく反映されているか

チェックポイント3.所得税がいくら差し引かれているか

特に注意したいのが「控除がきちんと活用されているか」という点です。控除の申請が漏れていると控除額が減ってしまい、本来よりも税額が増えてしまいます。

その結果、手取り額が少なくなり、日々の家計にも影響が出てしまう可能性があるのです。

年金が減っている!?…「青色のはがき」で知ったまさかの事実

寝無勤減男さん(仮名・68歳)は、長年中小企業の印刷会社に勤務してきました。現在は年金生活に入り、妻と娘の3人で暮らしています。

娘は結婚して家庭を持っていましたが、昨年離婚して実家に出戻り。現在は無職です。

寝無勤さん自身の年金額は、月に約18万円。妻の年金が月7万円ほどあるため、世帯全体では月あたり約25万円の収入があります。

年が明けたある日、日本年金機構から届いた「公的年金等の源泉徴収票」を、前年のものと見比べた寝無勤さんが、ある変化に気づきました。

支払金額の欄を見ると、前年度と比べて、月額換算で約4,000円少なくなっていたのです。

寝無勤さんは年金制度や税金について詳しいわけではなく、理由を考えてみても心当たりがありません。

不安を抱いた寝無勤さんは「なにかの間違いでは」と思いつつ、過去に相談したことのあるファイナンシャルプランナー(FP)に連絡しました。

原因は「出し忘れていた1枚の書類」

寝無勤さんから一連の経緯を聞いたFPは、年金減額の原因についてある可能性を口にします。

「寝無勤さまは『扶養控除等申告書』の手続きを忘れていたのではないでしょうか?」

「扶養控除等申告書」とは、公的年金の受給者に対して、毎年9月ごろに日本年金機構から届く書類です。配偶者控除や扶養控除など、該当する控除がある場合は、内容を記入して提出する必要があります。

もしこの申告書を提出していない場合、原則として基礎控除しか適用されず、その結果、所得税が多く計算されてしまう可能性があるのです。

さっそく源泉徴収票を確認したところ、配偶者の有無の欄にチェックが入っておらず、配偶者控除が適用されていませんでした。

さらに注意が必要なのは、この源泉徴収票の内容が、住民税の計算にも反映される点です。

住民税は6月に金額が見直され、これは源泉徴収票の情報をもとに算出されます。そのため、所得税だけでなく住民税にも影響するのです。所得税と住民税を合わせて、年間で10万円近く差が出るケースもあります。

「たしかに、書類が届いていたような。なんだか難しそうで後回しにしているうちに、出し忘れてしまったのかもしれません……もうどうにもなりませんか?」

書類を出し忘れたときの“救済策”

心配そうな寝無勤さんに対して、FPは次のように説明しました。

「いまからでも扶養控除等申告書を改めて提出すれば、遡って税額を再計算してもらえることがあります。住民税についても、管轄の役所に申請すれば対応してもらえるケースがありますよ。確定申告による対応も可能です」

またFPは、「寝無勤さんと同居している無職の娘も、扶養控除の対象になる可能性がある」といいます。

配偶者控除に加えて、娘の扶養控除も適用することができれば、寝無勤さんの税負担はさらに軽くなりそうです。

書類の「見落とし」「出し忘れ」が年金額を左右する

今回のように、毎年届く書類をなんとなく見過ごしてしまうことで、気づかないうちに税負担が増えてしまうケースは少なくありません。

公的年金は、老後の家計を支える重要な収入です。手続きの見落としによって不要な税負担が生じないよう、届いた書類は必ず確認しておきましょう。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP

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