夫婦で年金月23万円、退職金1,800万だが…妻が「もう限界」と悲鳴。気ままな老後を食いつぶす、実家のこたつ4分の3をデーンと陣取る38歳・出戻り次女の「ぬくぬく寄生術」【FPが解説】

夫婦で年金月23万円、退職金1,800万だが…妻が「もう限界」と悲鳴。気ままな老後を食いつぶす、実家のこたつ4分の3をデーンと陣取る38歳・出戻り次女の「ぬくぬく寄生術」【FPが解説】

かつては娘が結婚すれば「親の務めは果たした」と安心できたものですが、離婚も珍しくないいまの時代、そう単純な話ではありません。結婚する娘に対し、名残惜しさから「いつでも戻っておいで」と声をかけたものの、実際に「出戻り」という現実を突きつけられると、手放しでは喜べない複雑な心境になるようで……。本記事では、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が、介護士の佐藤さん(仮名)の事例とともに老後の子どもへの生活支援について解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

肉付きがよくなって出戻ってきた次女

神奈川県内の戸建てに暮らす佐藤さん夫妻(仮名)は、ともに67歳。夫の年金は月14万円、妻の和子さん(仮名)が月9万円で、世帯年金は月23万円です。加えて退職金は2人合わせて1,800万円。贅沢はできないものの、旅行や外食をほどほどに楽しみながら、穏やかな老後を送る計画でした。

そこに戻ってきたのが、次女の恵さん(仮名/38歳)です。結婚10年目での離婚。仕事も辞め、荷物を抱えて突然帰省してきたのです。

「しばらくお世話になるね。すぐ働くから」

そう神妙に話す娘を、和子さんは信じて迎え入れました。ところが、現実は違いました。朝は昼近くまで寝て、食事は当然のように親任せ。何より和子さんを困惑させたのは、恵さんの食生活でした。

離婚によるストレスからか、深夜に菓子パンや惣菜を大量に買い込んでは胃に詰め込む「ドカ食い」が習慣化していたのです。心の空洞を埋めるかのようなその食欲のツケは、そのまま食費の急騰となって老親の財布を直撃。以前より食費は月2万円以上も跳ね上がり、光熱費も右肩上がりとなりました。気づけば、スマートフォン代や保険料までも親が立て替える始末。

毎月の赤字は3万円近く……。和子さんは家計簿を前に、ため息をつく日々です。

老後家計への影響は深刻

日本では、離婚後に実家へ戻る女性は決して少なくありません。問題は、親世代がすでに年金生活に入っているケースです。

年金月23万円の世帯では、可処分所得は決して多くありません。住居費がかからないとはいえ、食費、医療費、固定資産税、車の維持費などを差し引くと、余裕資金は月数万円が限界でしょう。そこに成人した家族が1人加わるだけで、家計のバランスは簡単に崩れてしまうのです。

「老後は貯金を取り崩しながら暮らせばいい」と考えがちですが、取り崩しが想定より早まると、80代以降の生活に直撃します。特に女性は長生きの傾向があり、和子さんは「私が1人になったとき、この貯金で足りるのかしら」という切実な不安を抱くようになりました。

一方で、恵さんも不安を抱えています。再就職への自信を失い、離婚による自己肯定感の低下に苦しんでいました。その居心地のよさが、実家への依存を強めている側面も否定できません。

こたつで爆発した怒り

そんなある日の夕暮れ、和子さんの我慢はついに限界を迎えます。居間のこたつに入ると、そこにはいつものように恵さんが体を伸ばし、スペースの4分の3を独占して寝そべっていました。

「ちょっと、足を縮めてくれない?」

和子さんが努めて冷静に声をかけると、恵さんはスマホを眺めたまま、「え、狭い?」と悪気のない返事を返します。その無防備で身勝手な態度が、和子さんのなかで張り詰めていた糸を切りました。

自分たちの老後資金が削られ、自由な空間さえ奪われている現状。このままでは共倒れになってしまう――。和子さんは、恵さんの足を押し返すようにして、真っ直ぐに娘の目を見据えました。そして、絞り出すようにこう切り出したのです。

「恵、もう限界なの。一緒に住むのはいいわ。でも、私たちも老後なの。これからの期限とお金の話、ちゃんとしましょう」

その言葉の重みに、恵さんはハッとした表情を浮かべ、やがて涙をためながら静かにうなずいたといいます。

老後破綻を防ぐために必要な線引きとお金のルール

ファイナンシャルプランナーとして、まずお伝えしたいのは、情とお金は切り分ける必要があるという点です。

まずは生活費の明確化。食費や光熱費として、最低でも月3万円から5万円の負担を求めるべきです。払えないなら、就労までの期限を区切りましょう。

次に老後資金の見える化です。退職金1,800万円が、何歳までの生活費を賄う前提なのかを数値で確認します。そこに子の生活費が含まれていないことを、本人にも伝えなければなりません。

そして、住み続ける前提をつくらないことです。「いつまでにどうするか」を言葉にしない同居は、ずるずると長期化します。

親の老後と、子の人生は別物です。助け合うことと、依存を許すことは違います。老後破綻を防ぐ第一歩は、静かな違和感に気づいた時点で、現実的な対話を始めることです。感情ではなく、数字で。これが、家族を守るための最も冷静で優しい選択なのかもしれません。

波多 勇気

波多FP事務所 代表

ファイナンシャルプランナー

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