
マイホームの購入を検討する際、まず考えなければならないのが「予算」です。いくら良い物件でも買えなければ意味がない……そのため、物件の条件を緩めて購入価格を抑えたり、頭金を多めに入れたりと、家計に無理のない予算を考える必要があります。しかし、自身では堅実な計画を組んだつもりでも、購入後「思わぬ後悔」に苛まれるケースもあるようです。念願のマイホームを手に入れた39歳の会社員の事例をみていきましょう。
マイホームの購入「自己資金」はいくら入れる?
国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」によると、住宅購入資金の「自己資金比率」は、おおむね27%~45%だそうです(図表参照)。この「自己資金」には、預貯金や親からの贈与のほか、遺産相続なども含めます。
[図表]住宅購入資金の自己資金比率 出典:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」
では、住宅購入時、ほとんどの人が利用するであろう住宅ローンについて、適切な借入金額はいくらなのでしょうか。ひとつの目安となるのが「返済負担率」です。
返済負担率とは、年収に占める年間ローン返済額の割合(年間返済額 ÷ 年収)のことをいいます。これは金融機関の住宅ローン審査でも用いられる指標で、一般的に「返済負担率30~35%以下」を基準としている金融機関が多いようです。
“堅実な予算設計”のもと住宅を購入した39歳男性
Aさん(39歳)は、4歳年下の妻と5歳の長男の3人家族です。昨年購入した、ある地方都市の中古戸建て住宅で暮らしています。
Aさん夫妻は共働きでしたが、Aさんが「ペアローンは、将来支出が増えたり収入が減ったりした場合に返済が苦しくなるから」と、Aさん単独で地元の銀行から3,500万円借り入れ、住宅ローンで25年間、毎月約14万円返済しています。
年収700万円のAさんは「返済に追われたくないから」と、3,500万円(返済負担率24%)を住宅ローンの借入上限に定めて物件探しを開始。数ヵ月後、予算内の中古戸建を見つけて購入しました。
新居に引っ越したときは「ようやくマイホームが買えた。これで俺も一国一城の主だ」と興奮していたそうです。しかし、念願のマイホーム生活がスタートしてほどなく、Aさんは“想定外の事態”に見舞われます。
購入後に抱いた「後悔の念」
Aさんは、購入契約をした宅建業者から「既存住宅売買瑕疵保険※に加入しているので、もし住宅に欠陥が見つかっても、補修費用などは補償されますから心配いりません」と言われ、安心していました。
※ 中古住宅の売買時に、引き渡し後に見つかった「隠れた欠陥(瑕疵)」による補修費用などを、売主の代わりに保険がカバーする制度。宅建業者が売主の場合は原則2年間加入。
しかし、前の所有者が取り付けた給湯器やエアコンの故障など、保険の対象とならないトラブルが立て続けに発生。入居早々、想定外の出費が続きました。
思っていたよりも家計が苦しい…Aさんの後悔
また、毎年納付する固定資産税や都市計画税、室内の模様替えや庭の手入れなども、ボディブローのように家計を圧迫します。
「堅実な予算を組んだはずなのに……想定していた以上に家計が苦しいんです。いまとなっては後悔しています」
マイホームを購入して数年後、Aさんは後悔の念を口にしました。
真に適正な返済負担率とは
今回紹介したケースについて、Aさんが全面的に間違っていたとは思いません。ただ、筆者はこれまでの業務経験から、返済負担率は手取りで計算して20%前後が適正と考えています。
25%を超えると、返済開始時は問題なくとも、家族の成長とともに家計への影響は増し、節約をして出費を減らすといった小手先の対策では、対応できなくなる家庭も出てきます。
Aさんが自身で定めた返済負担率24%について、額面給与収入の700万円で計算し、借入額の根拠としていました。ただ、手取り給与の約530万円で計算すると、返済負担率は31.6%となります。そのためAさんは「思っていたよりも返済がキツい」という状況に陥ったのでしょう。
Aさんは「不動産価格が上がっているので、住宅ローンを借りている銀行と相談しながら、購入価格以上の値段で任意売却できないか検討している」とのことでした。
マイホームを購入する際、返済負担率は手取り給与で計算することが大切です。不動産価格の高騰が続くいまこそ、自身の資産状況と相談しながら冷静な住まい選びを心がけましょう。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
