全資産の5~10%は「現金」で持つ…超・富裕層が「投資に全振り」しない納得の理由【現役プライベートバンカーが解説】

全資産の5~10%は「現金」で持つ…超・富裕層が「投資に全振り」しない納得の理由【現役プライベートバンカーが解説】

株式、債券、不動産……。資産の種類は多様ですが、富裕層と呼ばれる人たちは、いったいどの資産をどんな目的で保有・運用するのでしょうか。本記事では、濵島成士郎氏の著書『現役プライベートバンカーがこっそり教える億万長者の資産運用』(すばる舎)から一部を抜粋・編集。資産クラスごとに富裕層の投資戦略を見ていきましょう。

富裕層の投資戦略の基本パターンとは?

昔から、資産配分には「黄金比率」と呼ばれる絶妙なバランスがあります。一般的には株式60: 債券40(いわゆる60/40ポートフォリオ)が鉄板と言われます。富裕層になると、この比率は人それぞれで大きく異なるようになりますが、基本的な考え方は同じです。

「あらゆる資産クラスを自分に合わせて組み合わせ、活用する」のが富裕層における王道の投資戦略です。さらに、主要な資産クラスにはバランスよく投資する点も共通しています。富裕層の多くが組み入れる資産について、簡単に確認していきましょう。

資産成長のエンジンである「株式」

株式は長期的なリターンの源泉であり、富裕層にとっても資産の成長エンジンです。保有しているだけで収益を生み、企業の利益成長に応じて評価額も上がります。インフレによる資産の減価にも対抗できます。

富裕層全体の傾向としては、個別株よりもETFやインデックスファンドを活用し、市場平均をとりにいくことのほうがやや多い印象があります。必要性や個人の好みに応じて、成長株やベンチャー企業への直接投資(プライベートエクイティ)を組み込み、より高いリターンを狙うこともあります。

株式と並ぶポートフォリオのコア「債券」

株式と並ぶポートフォリオの核(コア)が債券です。富裕層、特に超・富裕層にもなると、「資産を増やす」よりも「資産を守る」ことの重要性が強くなります。必然的に、ローリスク・ローリターンである債券が重視されるようになります。

教科書的に言えば、株式と債券は逆相関の関係にあるため、リスクの分散になります。また定期的なクーポン収入があるため、安定的なキャッシュフローを得られます。

インフレヘッジに適する「不動産」

富裕層の資産配分においては、不動産も欠かせません。不動産は賃料収入というキャッシュフローを生みつつ、実物資産としての価値を比較的長く保つ性質があります。インフレヘッジに特に適しているとされます。

また、不動産への投資では、物件自体を担保にして銀行等から融資(ローン)を引ける点も大きなメリットです。日本国内の場合、頭金として支出するのは物件価格の10~20%に抑えておき、あとは融資を活用することでレバレッジを効かし、資産の有効活用を図るのです。

加えて相続対策としての不動産投資は現在でも有効であるため、その意味でも富裕層には欠かせない投資対象となります。

「オルタナティブ資産」を伝統的資産と共に組み入れる

オルタナティブ資産という言葉は、上場株式や公社債といった伝統的資産とは異なる投資対象全般を指しています。ヘッジファンドやプライベートエクイティ、プライベートデット、暗号資産、コモディティ、インフラ、ワイン、音楽著作権、アートなどが含まれます。リートを含む不動産が入ることもあります。

富裕層のポートフォリオにおいては、伝統的資産とオルタナティブ資産の両方をバランスよく組み入れることが重要視されます。

フル投資ではなく適度な「現金比率」を維持

さらに、富裕層は戦略的に現金比率を調整することも忘れません。

「富裕層は現金をあまり持たず、フル投資している」というイメージがあるかもしれませんが、富裕層の資産に占める平均的な現金比率は2~3%、超・富裕層では5~10%程度という調査結果があります。2~3%、あるいは5~10%と言うと少なく感じるかもしれませんが、総資産が大きいので、金額ではかなり大きな現預金となります。

確かに、インフレに負けないよう、なるべく投資に振り向けるのが富裕層の基本姿勢ですが、その一方で市場環境の変化や大きな投資チャンスに備えるため、適度なキャッシュポジションを維持することも彼らは忘れません。流動性の低いオルタナティブ資産を多く保有するため、手元流動性を少し厚めに設定している、という側面もあります。

富裕層は市場が不安定な局面でも、慌てて資産を現金化したり、大量に売買したりしない傾向があります。「相場急変時にこそポートフォリオ全体の基本配分は崩さず、各資産クラス内で中身を入れ替える程度にとどめる」という冷静さを保ちます。

むしろ、暴落局面は準備していた現金で割安になった優良資産を買い増すチャンスである、と捉えるのが富裕層流です。私のクライアントでも、コロナショックの際に用意していた現金で株式を買い、その後の反発で大きな利益を上げた方が何人もいました。

富裕層が一定の現金比率を維持するのは、悲観からではなく、次の一手のための布石なのです。

濵島成士郎

シニア・プライベートバンカー

株式会社WealthLead 代表取締役

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