有名公立小学校に通うことのメリット・デメリット

第6回 公立小学校の失敗しない選び方
千代田区の番町小学校や港区の青南小学校、大田区の田園調布小学校など、“ブランド校”と呼ばれ、人気を集める公立小学校があります。これらのような公立小学校に通わせるため、わざわざ引越しをしたり、住民票を移したりする「公立小移民」が話題になることも多いですが、有名公立小学校に通うことでどんなメリットがあるのでしょうか?

教育ジャーナリストの斎藤剛史さんにお話をうかがいました。

有名公立小学校に通うことのメリット・デメリット

教育環境や人脈など、メリットは多い

有名で人気の学校とはいえ、結局は同じ公立小学校。私立ほど差別化できないような気もしますが、実際、メリットは多いようです。

「まず挙げられるのは、授業料。“ブランド校”とは言っても、公立の小学校なので、家計への負担は比較的少なく済みます」(斎藤さん、以下同)

また、子どもを取り巻く環境にもメリットはあるそう。

「有名な公立小学校には、教育熱心な家庭で、それなりの学力を持つ子どもが集まりやすいので、教育環境はいいと思います。加えて、同窓会などの強い結びつきがあり、卒業生や保護者のなかにも有力者が多いため、人脈を築くという点でもメリットはあるでしょう。『あの有名公立小学校に子どもが通っている』といった、お金だけでは手に入らないステータスを感じられるのも、ある意味メリットかもしれませんね」

“ブランド校”は保護者のイメージにすぎない

では、反対にデメリットを挙げるとしたら、どんなことが考えられるのでしょうか?

「たしかに、一般的に“ブランド校”と呼ばれる公立小学校は教育環境がよく、人気もあるのですが、その“名門”というブランドは、結局保護者のイメージにすぎません。そのため、引越しなどの手間と費用を考えれば、それに見合う投資効果が本当にあるかは疑問。単に進学の有利さを求めるならば、私立のほうが確実です」

また、教育熱心な保護者が多い学校ならではのデメリットも。

「教育方針や指導方針などをめぐって、教員と保護者がもめるケースも意外と多いです。また、同じような経験をしてきて、同じような価値観を持った子どもが集まるというのもデメリットのひとつ。一般的な公立小学校なら、家庭環境や経済状況などが多様な子どもたちが集まり、自分とは違う価値観に接することで得られることはたくさんありますが、有名公立小学校となると、家庭環境も経済状況も似てきます」

子どもの将来を考えると、できればよりよい教育環境で育っていってほしい。親として、そう思うのは当たり前かもしれません。しかし、「勉強」に重点をおいて有名公立小学校に進学しても、「心の成長」が置き去りにされてしまう可能性もあるようです。
(文・明日陽樹/考務店)

※本記事の情報は執筆時または公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

お話を聞いた人

斎藤剛史
教育ジャーナリスト
1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、旧文部省や東京都教育庁など主に教育行政の現場を取材する。「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリーのライター兼編集者。
1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、旧文部省や東京都教育庁など主に教育行政の現場を取材する。「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリーのライター兼編集者。