子どもの“強み”を伸ばすのがフィンランド流
まず、フィンランドの子育ての根本には“長所を伸ばす”という考え方があるようです。
「もともとフィンランドの人たちは、子どもたちが得意なことや好きなことをしっかり伸ばしてあげるという考え方を持っています。学校でも家庭でも、褒めてあげることがすごく多いと思います。なにかひとつを褒められると、ほかのことも自然と頑張ろうとするものです」(シルックさん 以下同)
また、のびのびと子どもの成長を待つおおらかさも同国ならでは。競争社会の風土が根強い日本では考えられないほど、のんびりした教育方針が浸透しているようです。
「子ども自身、とくに興味を持てることがない場合も何かを無理矢理やらせることはせず、気長に待つようにしますね。そして、もしやりたいことが見つかったら全力でサポートします。フィンランドには『ライバル』という言葉がないこともあって、社会全体的にも競争を嫌うので、誰かと比べるということもしません。その子の個性をしっかり認めてあげるというのが特徴です」
こうした「他人の子どもたちと比べない」考え方が広がっているからこそ、クリエイティブな感性も育ちやすいとシルックさんはいいます。
「私の知る限りではありますが、フィンランドの家庭では『お兄ちゃんなんだから我慢しなさい』とか『〇〇ちゃんもすごく頑張ってるんだから』などという、言い方はしません。“こうあるべき”という筋道を立てて諭したり、価値観を押し付けるようなことは、まずしませんね。また、親自身も理想的なお父さん、お母さんであろうとせずに本音で子どもと接していますね。まずは、子どものやることや考えを認めてあげて、好きなことをやりたいようにさせることが、結果的に個性的でクリエイティブな感性が育っていくのではないでしょうか」
周囲や世間の考えに流されずに、子どもと向き合ってあげるフィンランドの子育て。それが、何事にも縛られない自由な感性が育っていく秘密かも知れません。
(文・末吉陽子/やじろべえ)