「うつ」は甘えじゃない。多忙なママがメンタルを健やかに保つ秘けつ

第2回 ママも家族も知っておきたい「産後うつ」について
子育て、仕事、夫との関係、ママ友、PTA、実家の家族、義理の家族、介護…。結婚し、子どもを育てていく過程で、さまざまな関係性のなかで何役もこなし、多くの社会的ストレスにさらされている女性は少なくない。その状態が慢性化するうちに、「うつ」の引き金になることもある。

「うつ」は甘えじゃない。多忙なママがメンタルを健やかに保つ秘けつ

自らも過去に産後うつを経験。それがきっかけで一般社団法人メンタルヘルス協会認定の「上級心理カウンセラー」資格を取得したメンタルサポート研究所認定講師 今村範子さんに、多忙な女性こそ陥りやすい「うつ」の症状について話を聞いた。

現代のママはなぜ「うつ」になりやすい?

「核家族化が進み、近所付き合いがないことも珍しくない今の時代は、誰しも孤独感を抱きやすいもの。そんな状況に加えて、唯一の相談相手となり得る夫の仕事が忙しく、帰宅が遅い場合などは、悩みを誰にも打ち明けられずに、孤独感から視野が狭くなりがちです」(今村さん 以下同)

実母や義母、親戚など、親世代の女性たちから、「昔はきょうだいが多くて子育てはもっと大変だった」「一人産んだくらいでつらいなんて甘えだ」などの言葉を投げつけられ、落ち込んだ経験を持つママもいるのでは? だが昔と今では根本的な状況が違っている、と今村さんは指摘する。

「大家族での子育てと、今の母子だけになりがちな核家族の子育てには、大きな違いがあります。それは大人同士での会話の機会。幼い子とママだけのワンオペ育児が常態化した家庭では、一日中誰とも会話らしい会話をできないまま、子どもの安全に全神経を注がざるを得ないママが少なくありません」

優しくて真面目な性格の人ほど「うつ」に

孤独に陥りやすい現代の環境に加えて、その人自身の性格の傾向が「うつ」症状を後押しさせてしまうこともあるという。

「真面目な人、家族のために頑張りすぎてしまう人、甘えることが苦手な人、他人に優しい人ほど、自分のなかの怒りや悲しみ、弱さを無意識的に抑圧してしまいがち。これらの性質はもちろん長所や個性でもあるのですが、強いストレスが続く状況下では、うつを誘引する要因にもなります」

では、どうすれば「うつ」の悪化を食い止めることができるのだろう? 

「休養や睡眠、大人同士の会話、外出による気分転換などが効果的です。それでもしんどさが楽にならないときは、早めに心療内科を受診するか、カウンセリングを受けることをおすすめします。プロの精神科医やカウンセラーと話をすることで、抑え込んでいる感情を消化できるようになりますから」

「すぐイライラしてしまう」「不安になりやすく、怒りやすい」「自分は不器用でダメな人間。母親失格だ」…こういった罪悪感はすべて、あなた自身の過去の経験が育てた思い込みに過ぎない。

一気にすべてを解決するのは難しいかもしれない。だが、ひとつずつクリアしていけば、絶望や孤独感は必ず和らいでくるはずだ。「今の私はうつかも?」と思い当たるところがある人は、日々の忙しさにかまけて後回しにせず、無理やりでも自分のための時間をつくって医療機関やカウンセラーに相談しよう。
(取材・文:阿部花恵 編集:ノオト)

お話をお聞きした人

今村範子
今村範子
メンタルサポート研究所認定講師
一般社団法人メンタルヘルス協会認定 上級心理カウンセラー。3人目の子の産後に「産後うつ」を経験。カウンセリングで回復したことをきっかけに心理カウンセラーの資格を取得。
一般社団法人メンタルヘルス協会認定 上級心理カウンセラー。3人目の子の産後に「産後うつ」を経験。カウンセリングで回復したことをきっかけに心理カウンセラーの資格を取得。