自らも過去に産後うつを経験。それがきっかけで一般社団法人メンタルヘルス協会認定の「上級心理カウンセラー」資格を持つメンタルサポート研究所認定講師 今村範子さんに、「うつ」状態に陥ったときに取るべき行動について話を聞いた。
「イライラ」と「うつ」の違い、どう見極める?
「一時的な憂うつやイライラと違って、“うつ病”は状態が進むと心身にさまざまな不調が現れます。食欲がなくなる、体がだるい、疲れやすい、あらゆることがひどく面倒に思える、頭が重く感じる、動悸やめまいがする、日中のひどい眠気、不眠、胃の不快感、便秘、性欲がなくなる…などの症状が続くときはうつ病を疑っていいでしょう」(今村さん 以下同)
感情面でも顕著な動きがある。ふとしたときに涙が流れる、朝起きたときに強い不安を覚えるなどの症状が現れる人もいるという。一見すると、PMS(月経前症候群)ともよく似ているが、PMSが一時的なものであるのに対して、長期に渡って症状が続くのがうつ病の特徴だ。
「よく感じるイライラや憂うつ感以外にも身体的な症状がある、かつそれらが2週間以上毎日のように、ほとんど1日中続いている。このような条件が揃った場合は、早めに精神科、心療内科を受診することをおすすめします」
治療の二本柱は抗うつ薬とカウンセリング
だが、精神科や心療内科を受診することに、心理的な抵抗感を覚える人もいるだろう。そういった場合に駆け込める場所はあるのだろうか?
「精神科のハードルが高いと感じる方は、まずは身近な保健師さんや、かかりつけの婦人科の先生に相談してみましょう。メンタル面に詳しい先生なら、症状を見極めて適切なクリニックを紹介してくれるはずです」
並行して、心理カウンセラーによるカウンセリングを受けることも回復に向けての効果があるという。
「つらい思いを言葉にして吐き出し、誰かに親身に聞いてもらうだけでも楽になりますから。経験豊富なカウンセラーならば、相談内容に応じて医療機関と連携を取りながら治療を進めることもできます」
では、もしも担当の医師やカウンセラーと「なんだか相性が合わないかも」と感じたときはどうすればいいのだろう?
「その場合は、ご自身が安心して診てもらえると感じる先生をセカンドオピニオンで探すことをおすすめします。信頼できる相手と治療やカウンセリングを続けていくうちに、まるで薄紙を剥がしていくかのように、少しずつ、楽になっていくはずです」
今村さんが考える、うつ病から回復するためのポイントは次の2点だ。
・医師と相談しながら、不安やイライラを和らげる適切な薬(抗うつ薬)をきちんと飲む
・服薬と並行して、溜め込んだ感情を楽にするために適切なカウンセリングを受ける
「抗うつ薬は効き目が現れるまでにやや時間がかかります。ただ、副作用はわりと早い時期に感じるため、『効かない気がする』と感じることも多々あります。個人差はありますが、1~2週間を過ぎた頃から効き目を感じる方が多いので、自己判断で途中で止めないことが大事です」
適切な対応を続けることで、状態は少しずつでも必ず改善していくはずだ。心療内科は特別な場所ではないし、抗うつ薬も過剰に怖がるような薬ではない。正しい知識と周囲の人のサポートを味方につけながら、焦らず、ゆっくりと回復への道を歩んでいこう。
(取材・文:阿部花恵 編集:ノオト)