「ダニ=刺す」は必ずしも正しくない
ダニは人を刺すものだと認識している人も少なくないだろう。しかし、屋内に至っては、人を刺す種別は少ないと渡辺さんはいう。
「ダニにもさまざまな種類があり、家に多く発生するダニは、屋内塵性(おくないじんせい)ダニと称されるヒョウヒダニやコナダニ、ツメダニなどです。このうちのヒョウヒダニとコナダニは人を刺しません。ツメダニは人を刺しますが、数としてはあまり多くはないんです」(渡辺さん 以下同)
ただし、ツメダニはヒョウヒダニとコナダニの体液を吸っていきているため、養分となるダニの数が増えれば、その分ツメダニも増えてしまうそう。ツメダニに刺された箇所は赤くなり、かゆみも生じる。
一方、屋外ではマダニのように吸血するタイプもいる。
「マダニは基本的に屋内にはいませんが、散歩の際にペットに寄生したまま屋内に持ち込まれるケースがあります。草むらに生息するため、家で庭作業をするときや山登りなどでも注意が必要です。マダニに咬まれると、日本紅斑熱やSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの感染症を引き起こすことも。虫除け剤で予防してください」
虫除け剤の使用のほか、袖のしまる長袖、長ズボンなどマダニに咬まれないための服装で身を守ることも大切だ。
花粉よりも深刻? もう一つの健康被害
ダニによって生じる健康被害は、ほかにもある。
「ヒョウヒダニの死骸やフンは、アレルギーや小児ぜんそくの原因になるといわれています。とくに死骸は粉々になると細かくなるため、布団の上げ下ろしや人が横を通ることで、埃のように舞い上がります。これらを吸い込むことにより、健康被害が生じるというわけです」
生きているヒョウヒダニよりも、アレルゲンとなるのは死骸やフン。東京都福祉保健局によると、ダニによるアレルギー症状には、気管支ぜんそくや鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎などがあるそう。
「ダニの場合、スギやブタクサよりもアレルギー陽性率が高いという結果が報告されています。ハウスダストと同じくらいの高レベルです」
ヒョウヒダニは高温多湿を好み、人の汗やフケ、垢などを食べて繁殖する。ぬいぐるみやソファ、カーペットのほか、しまっておいた衣類など、さまざまな布製品に存在するため、小さな子どものいる家庭では、特に注意が必要だ。
人を刺すダニもいれば、死んでからも健康被害の原因となるダニもいる。一年のうちで最もダニが増える6月から7月を前に、駆除剤の使用や掃除機など、できる対策をしておきたい。
(取材・文:畑菜穂子 編集:ノオト)