たなか耳鼻咽喉科の院長、田中伸明先生に話を聞いてみた。
「実を言うと、耳のなかに何かが入ったからといって慌てる必要はないんです。乳幼児だとBB弾やビーズといった小さいものを耳に入れてしまうことが多いですが、そもそも鼓膜から奥に入ることはないので、命にかかわる心配はありません」(田中先生 以下同)
耳の穴から鼓膜に至るまでを外耳道というが、この管状の入り口はS字状に曲がっている。そのため、小さな異物が耳の穴に入ったとしても、奥まで入り込んで鼓膜などを傷つける危険性は低いのだとか。
むしろ、子どもの耳のなかに何かが入った際、親が慌てて取り出そうとする行為が逆効果になるのだという。
「耳のトラブルになるのは、自分で取ろうとするケースですね。小さなものを無理に取ろうとして、逆に奥に押し込んでしまうことがあります。耳の奥の3分の2は皮膚が約0.2ミリと薄く、傷つきやすく、出血したり痛くなりやすい場所です。慌てて自分で取ろうとするのではなく、落ち着いて医療機関で取り出してもらうのが一番いいと思います」
耳のなかに入るといえば、水も心配だ。耳に水が入ると、中耳炎になりやすいと聞いたことがあるような。
「それは誤った認識なんです。中耳炎は鼻やのどから耳管(じかん)という管を通ってばい菌が耳の中耳に入り込んで痛みや熱を招くもの。耳の穴と中耳という部屋の間には鼓膜があるので、正常な状態で耳に入った水が中耳炎の原因となることはまずあり得ません」
さらには、耳に水が入った場合は放っておいて構わないとのこと。
「子どもの体温は37度くらい。例えば37度前後の保温器の中に水を数滴たらしたとして、半日ぐらいで蒸発してしまいますよね。それと同じで、そのままにしておけばいずれ耳のなかに入った水もなくなってしまいます。こちらも耳の奥を傷つけるリスクのほうが怖いので、気になるのであれば病院に行くことをお勧めします」
耳に何かが入っても、慌てなくていいと聞いてひと安心。子どもが耳の穴に異物を入れても、無理に取り出さずに病院に行こう。もちろん、耳をはじめ、鼻や口に入れてしまいそうな小さなものは子どもの手の届かないところに置くように気をつけて。
(二本松菊子+ノオト)