とはいえ、性同一性障害について、正しく理解している人は少ないのでは? 性同一性障害について、NPO法人 性同一性障害支援機構・理事長の中山貴将さんに聞いた。
「性同一性障害とは、自分の心(脳)の性と体の性が一致しないという障害です。自分の体に強い違和感があり、治療を必要とする点が、同性愛者や女装・男装者とは異なります。現在は、脳(心)の性別は変えられないので、脳に体を近づけていく治療を受けます」(中山さん 以下同)
実は、中山さん自身も性同一性障害の当事者で、30代半ばで性別適合手術を受け、戸籍を女性から男性へ変えている。中山さんに子どものころの様子を聞いた。
「母に聞くとスカートを嫌がっていたとか、グリコの男の子用のオマケが欲しくて、ケンカをして近所の男の子から取り上げたとか(笑)。小学校入学のときには赤いランドセルが嫌で、入学式でスカートをはくのも嫌でスーツで出席しました。ただ、当時は性同一性障害という言葉が無かったので、自分が感じている違和感を長い間上手く言葉にできずにいました」
ところで、3、4歳の男の子がスカートをはきたがったり、女の子が男の子のように振る舞ったりするのは性同一性障害の表れなのだろか?
「性同一性障害かもしれませんし、違うかもしれません。どんなとき何が嫌なのか、自分の気持ちを伝えることができない年齢では、とても判断が難しいのです。僕は小学生以下の子どもの場合には、親たちは“見守る”ことが一番大切だと思っています。親が個人の判断で『自分の子どもは性同一性障害だから…』と先に道筋を作ってしまうと、性同一性障害ではなかったときに後戻りしづらい状況になってしまうからです」
ときには見てみぬふりも必要だと、中山さんは言う。
「ターニングポイントは、本人が悩みを伝えてきたときです。自分の性に違和感を覚えて告白してきたときには、その気持ちを受け入れて一緒に考えてあげてください。中学生になると制服や授業が男女で分けられるようになります。何が嫌なのか本人の気持ちもハッキリしてきます。そのときには専門知識があるカウンセラーやジェンダークリニックで相談するのが良いかと思います」
ジェンダークリニックは、性同一性障害の認定ができる病院のこと。治療内容については、岡山大学病院ジェンダークリニックのサイトがわかりやすい。また、自治体によっては相談窓口を設けているところもある。自治体の相談窓口では性同一性障害の判断はできないが、次にどうすればいいか一緒に考えてくれるそう。親子だけで悩まないためにも、身近な相談窓口を利用してみよう。(川野ヒロミ+ノオト)