「性同一性障害は育て方に起因するものではありません。 生まれたときから心の性と体の性が違っているのですから、親が与えるオモチャや洋服は影響しません。そのため、『子育てが間違っていたのでは?』と悩む必要はないんですよ。僕の場合は、身体的には女の子でしたが、脳は男の子でした。母が女の子用の服やオモチャを買ってくれても、自分の性への違和感は変わりませんでした」(中山さん 以下同)
妊娠中に母親が受けるストレスが性同一性障害の原因になるという声もあるが、本当のところはどうなのか?
「たしかに、胎児のときに受けるホルモンの影響(ホルモンシャワー説)が有力とされていますが、これも確定しているわけではありません。今まで多くの当事者たちに出会ってきましたが、すべての人に共通する理由はないのです。それよりも、子どもにとっては親が自分のことで悩むのがとてもつらいことなんです」
例えば、男の子が女の子とばかり遊んでいたり、女の子のような洋服を好んだりという場合には、親はどうすればいいのだろう?「男の子なんだから…」と言ってもいいのだろうか?
「『男の子なんだから…』『女の子なんだから…』と言われるのは、子どもは嫌でしょう。ただ、子どもは親の期待に沿わなくてはという気持ちがありますから、嫌でも親が買ってきてくれた洋服だから着なければ、という子どももいます。一方で絶対に着ない! という子どももいますから難しいです」
最近では性同一性障害の認識の広がりとともに、学校と連携して、ケアが行われている事例もあるのだとか。
子ども本人が自分の性に違和感を覚えていると言ってきたとき、悩んでいる様子があるときには、親は子育てを振り返って悩むよりも、その気持ちを受け入れて一緒に考えることが大切だ。
(川野ヒロミ+ノオト)