しかし、そんな親の心配に対して、「鉄道で子どもは賢くなる」と答えてくれるのが、『子どもはなぜ電車が好きなのか 鉄道好きの教育<鉄>学』(冬弓舎)の著者、弘田陽介さんだ。
弘田さんは、息子が“子鉄”になったことをきっかけに、「子ども」と「鉄道」のつながりを教育学の視点から考察。本書は、世界でも類まれな日本の多様な鉄道デザインや、「がたんごとん」と響く独特な音響世界など、子どもが鉄道に惹き付けられる理由を体系的に解説。子どもの内面世界を広げる存在としての「鉄道」を、知育の観点から紐解いている。
「鉄道からは物の形や色、デザイン、名前など、様々なことが学べます。ただ、知識を深めるだけでは、社交性は身に付きません。鉄道への愛は尊いものですが、広い視野でさまざまな事柄にも関心を持ち、人と人とのコミュニケーション力を高めるように会話してください」(弘田さん 以下同)
そうはいっても、鉄道一筋のわが子。関心の幅を広げるにはどうしたらいいのだろうか?
「多くの子どもは4歳くらいになると、鉄道から違う対象に自然に興味が変わっていきます。電車が好き過ぎて心配という親御さんもいるかもしれませんが、今はそれでまったく問題ありません。さまざまな世界を見せてあげながら、そのときにお子さんが望む機会や事物をできるだけ与えてあげることが、自然な発達を促すのです」
鉄道好きな子どもたちの多くは“卒業”する。そう思うと、今わが子が熱中している鉄道が儚くも、愛おしいものに思えてこないだろうか。
子どもは鉄道を通じて、線路の上を力強く走る列車のようにまっすぐ成長し、知性を育んでいく。今親ができることは、子どもから自然に生まれる好奇心を尊重しながら、いつか“卒業”するかもしれないその日まで、“鉄”三昧の日々を過ごさせてあげることなのだ。
(根岸達朗+ノオト)