高齢妊娠のリスクとメリット

高齢妊娠のリスクとメリット

第3回 高齢妊娠のリスクは? 卵子年齢について知ろう
昨今、高齢妊娠・出産が増えてきているが、それにはどんなリスクが考えられるのだろうか。不妊治療に携わっている東邦大学医療センター大森病院の産婦人科准教授、片桐由起子先生に話を聞いてきた。

「高齢になるにしたがって卵子の老化で妊娠しにくくなる、流産する確率が上がるなどのリスクが考えられます。妊娠する力は年と共に低下するため、妊娠・出産は思い立ったらすぐチャレンジに入ったほうがいいと思います」(片桐さん 以下同)

逆に、高齢で産むことのメリットはあるの?

「医学的な視点からいうと、高齢妊娠のメリットは思い当たりません。しかし、経済力や仕事のマネジメント力など、育児と仕事の両立がしやすいなどの社会的メリットはあると思います。こればっかりは、それぞれの人が総合的に判断するべきことですね」

卵子の老化で懸念される点として、細胞の染色体の数的異常がある。卵細胞のなかには46本の染色体があり、本来なら細胞分裂時に均等に分割される。しかし、卵子が老化することでこの分裂がうまくいかないことがあるのだ。

「染色体の数的異常による病気のうち、出生頻度の最も多い病気としてダウン症があります。ダウン症は、21番目の染色体が1本多い先天性疾患です。統計では、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は25歳では1383分の1、40歳では84分の1といわれています(参考:NIPTコンソーシアム)」

高齢妊娠には医学的な見地からはメリットがないとされている。

子どもが欲しいと思っていてもパートナーがまだ見つかっていない場合、最近では卵子凍結保存を考える人もいるようだ。

「卵子凍結保存とは、卵巣から採卵して保存をする方法です。妊娠率が高いのは若い卵子なので、40歳以上の卵子凍結は推奨されません。また凍結保存した未受精卵子などの使用時の年齢については、45歳以上の推奨はありません(日本生殖医学会)。ただし、これを行ったからといって将来の妊娠が保障されるものではありません。体に針を刺して採卵するので、お腹に炎症を起こして癒着を起こしたり、お腹のなかに出血をして、手術で止血する場合もあります。ですから積極的に推奨するものではなく、一人ひとりが良く考えて選択するべきことです」

卵子凍結保存を行うケースとして、がん患者などに、そのような選択肢を提示するのだとか。これは、がんなどの治療で抗がん剤を使うと卵巣機能が低下する可能性が懸念されるためであるそう。

「例えば、25歳の女性ががんの化学療法をして30歳代を迎えた場合、40歳代の卵巣年齢になってしまう可能性があります。卵巣年齢が下がってしまう可能性が懸念されているので、少しでもチャンスを残すためにそういう選択肢を紹介するわけです」

生活スタイルは人それぞれ違うため、なかには高齢妊娠にならざるをえない人もいるだろう。しかし、高齢妊娠には卵子の老化というリスクがあることを踏まえ、自分のライフプランを設計していこう。
(石水典子+ノオト)

お話をお聞きした人

片桐由起子
片桐由起子
東邦大学医療センター大森病院
東邦大学医療センター大森病院産婦人科教授。不妊治療やその研究、生殖医療に携わる。妊活セミナーなど、講演活動も行っている。
東邦大学医療センター大森病院産婦人科教授。不妊治療やその研究、生殖医療に携わる。妊活セミナーなど、講演活動も行っている。