「卵子年齢は卵巣の中で眠っている時間(実年齢プラス1歳)を表すため、加齢を止めることはできません。例えば、同じ40歳でも外見の若く見える方のほうが細胞が活発で卵子の年齢が若いかというと、そうではないのです」
こう教えてくれたのは、不妊治療に携わっている東邦大学医療センター大森病院の産婦人科准教授、片桐由起子先生。
「少しでも卵子の質の低下を防ぐには、規則正しい生活が欠かせません。逆に、喫煙や血液の巡りが悪いことは卵子の老化を早める原因になります」
ところで、月経は卵子年齢を知る基準になるのだろうか?
「生理が順調でも30歳ぐらいには妊娠する力は下がり始めます。不妊や妊娠しにくさが自分の実感として分かるように表れてくるのが30代後半、40歳代になると生理不順などの形で出てきます」
不妊かどうかは、妊娠することにトライしないと分からない。妊娠する力が下がっていることを実感として気づけるときには、不妊治療をしても妊娠・出産の可能性が低くなっていることが多いのだとか。
「排卵誘発剤を使って3個取れた卵子が1個しか子宮に移植できなかった。移植できなかった2個は卵子の老化が原因かもしれないなど、不妊治療の場面では日々卵子の老化について考えることになります。例えば、本当は排卵誘発剤で卵子を7個育てたかったけれど3個しか育たたなかったというのは卵巣予備能の低下も要因にあります」
不妊治療の現場では卵子の老化は毎日向き合わなければいけないのが現実。しかし、患者さんによっては不妊治療を始めてから卵子の老化について知る人は少なくない。
「多くのメディアで高齢出産が取り上げられていますが、医学的にみれば妊娠は20代~30代前半くらいが妊娠しやすく、合併症のリスクも少ない適齢期です。これらの現実は誰にでも起こること。そのことを十分に理解したうえで妊娠や出産について考えてほしいですね」
妊娠・出産を考えるなら、「いずれそのうち」ではなくて「今」行動を起こすことが大切になってくるといえそうだ。
(石水典子+ノオト)