運動オンチは遺伝しないってホント?

運動オンチは遺伝しないってホント?

第1回 わが子の運動神経がどんどんよくなる子育て
今も昔も、子どもの社会では、“運動のできる子”は人気者。“わが子も運動のできる子になってほしい…、でもこれって私たち親からの遺伝だから…”と、嘆く親御さんも少なくないようですが、運動神経は本当に遺伝するのでしょうか?

「厳密にいうと、骨格や筋肉の質などの遺伝は否定できません。ただし、そこが大事ではないんですね。例えば、トップアスリートの遺伝子を受け継いだお子さんが生まれたとして、まったく運動をさせなければ宝の持ち腐れになってしまいます。運動をする両親のお子さんは、自然に運動する環境に身を置くことになりますよね? つまり、先天的な要素より、それ以上に後天的な要素のほうが強い。環境による影響が強いんですね」と話すのは、『“運動神経を育てる”子ども運動教室・リトルアスリートクラブ』の代表トレーナー・遠山健太さん。

運動オンチは遺伝しないってホント?

問題なのは運動が苦手な親の遺伝子というより、親が苦手だから運動をあまりしないという環境。その結果、幼児期から運動の経験が足りず苦手になってしまうという悪循環を生むのだという。

「もともと子どもというのは、遊ぶこと、運動することが大好きなんです。ところが、親御さんが運動への苦手意識を持っているがために、外にお子さんを連れ出して一緒に遊んだり、スポーツをしたりしなければ、大事な運動能力の芽を摘んでしまっていることになるんです」

つまり、親の意識と行動さえ変えれば、運動神経の遺伝はそこまで重要ではなくなるという。では、運動神経を伸ばすためには何をしたらいいのでしょうか?

「よく言われる“運動神経”というのは、脳→脊髄→末梢神経→筋肉→運動という回路のことで、幼児期の脳に、この回路のバリエーションをたくさん作っておくことが大切なんです。つまり、多種多様な運動を繰り返し経験する“環境”さえ整えてあげれば、どんな子どもでも運動神経がよくなるわけです」

運動オンチは遺伝しないってホント?

近年では、“転んだときに両手を出せない”“鉄棒にぶらさがれない”“すぐ転ぶ”など、子どもたちの運動能力低下も問題視されているといいます。

「共働き家庭が増え、なかなか親子で外遊びができない環境や、少子化による子ども同士で遊ぶ機会の減少、子どもの遊びがゲームなどインドアになってきていることなど、さまざまな原因が考えられます。その結果、運動遊びに興味がない子どもが増えているんですね。まずは、自分の体力や動きに興味を持つ子が増えること=運動好きな子が増えることこそが、日本の子どもの運動能力低下の改善につながっていくと思いますね」

そのカギを握っているのが、なんといっても“親”だと遠山さんは話します。

「公園に連れ出して遊具で遊ばせたり、鬼ごっこをしたり、相撲を取ったり…などは、親御さんに特別な運動能力がなくてもできることですね。常日ごろから運動遊びを体験させてあげられるのは、学校でも体操教室でもなく、親御さんです。子どもは、お父さんやお母さんと遊ぶことが大好き。どうか、お子さんの日々の成長を楽しみながら一緒に遊び、たくさん褒めてあげて運動を楽しむ心と運動神経を育んであげてください」

お子さんの運動神経を伸ばせるかは、環境次第! 運動に苦手意識を持っていたママも、ぜひ今日から公園でお子さんと全力で遊んであげてください。
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

遠山健太
遠山健太
リトルアスリートクラブ(代表トレーナー)
ワシントン州立大学教育学部初等教育学科卒。「リトルアスリートクラブ」の“運動神経を育てる”プログラムを学研とともに開発。また、小学生と幼稚園児の2児の父でもある。
ワシントン州立大学教育学部初等教育学科卒。「リトルアスリートクラブ」の“運動神経を育てる”プログラムを学研とともに開発。また、小学生と幼稚園児の2児の父でもある。

取材協力

リトルアスリートクラブ
リトルアスリートクラブ
学研とプロトレーナーが開発した子ども運動教室。そのプログラムは、“基本動作”(身体を自分の思い通りに動かすために必要な動作)を経験し、たくさんの刺激を与えてあげることで、”運動神経を育てる”ことを目指している。関東一円で展開中。
学研とプロトレーナーが開発した子ども運動教室。そのプログラムは、“基本動作”(身体を自分の思い通りに動かすために必要な動作)を経験し、たくさんの刺激を与えてあげることで、”運動神経を育てる”ことを目指している。関東一円で展開中。