「実は、もっとも大事なのは、個人差もありますが、6歳頃までなんですね。運動神経を育むためには、小さいころの運動の経験がとても大切です。その理由は、乳幼児期が神経系の発達が著しいからです」
そう話すのは、『“運動神経を育てる”子ども運動教室・リトルアスリートクラブ』の代表トレーナー、遠山健太さん。
大人の神経系の状態を100%とすると、生まれてから5歳くらいまでに80%くらいはできてしまうというから驚き!
「運動神経を育むということは、脳に様々な動きの神経回路を作ることなので、この時期は効率もよく、絶好のチャンスというわけです。幼児期は、普段の遊びや生活のなかの多種多様な動きを経験させることが何より重要で、習い事を楽しむ程度で十分。まだ何かの種目に特化したスポーツ技術などを本気でやらせる必要はありません。まずは、ベースとなる運動神経の回路をたくさん作ってあげてください」(遠山さん 以下同)
では、6歳頃までに、普段の生活のなかのどんなことで運動神経の回路を作っていったらいいのでしょうか? 遠山さんが例を挙げてくださいました。
●赤ちゃんのハイハイは全身運動
「赤ちゃんのハイハイは、腕や足腰が鍛えられるだけでなく、反射神経、脳の刺激や知育の発達も促すので、とても重要です。また、お子さんが歩きだしたら、裸足で歩かせることも大事です。室内だけでなく、公園の芝生、砂場などで足裏に刺激を与えて感覚を鍛え、土踏まずのある足にすることが大切です」
●ボール遊び、お馬さん遊び、相撲遊び
「“投げる”という動作は難度が高い動作のひとつなので、ぜひ小さいころからボールには触れさせてください。球技だけでなく道具を扱うスポーツにも役立ちますので。また、四つん這いになった親御さんの上にお子さんを乗せる“お馬さん遊び”は、バランス感覚を養い、姿勢もよくしてくれる効果があります。そして、私がもっともおすすめなのは、“相撲遊び”です。相撲には押す、引く、投げる、握る、そして力の出し入れ(出力、脱力)という、いろんな動作が学べます。親子のスキンシップにもなりますので、ぜひ一緒に楽しんでください」
●逆立ちは三半規管の機能を高める
「逆立ちやでんぐり返しなど、頭を逆さにすることも小さいころに経験しておくといいでしょう。三半規管の機能を高めるだけでなく、平衡感覚を養うことにもつながります」
●公園の遊具遊び
「公園の遊具は、とてもよく考えて作られていて、いろいろな動作が習得できます。中でも、ジャングルジムは、“渡り歩き”“登り下り”“くぐる”“飛び下りる”“ぶら下がる”など、経験できる“基本動作”“が豊富なのでおすすめです」
●家のお手伝いをさせる
「家でのお手伝いもおすすめです。履き掃除、ぞうきんがけ、皿洗い…“基本動作”の繰り返しによって、手先の器用さ、バランス感覚、道具を扱う能力など、いろんな動作が洗練されていくうえに集中力もつきます」
お子さんの運動神経を育むベースは特別な運動ではなく、日々の生活のなかにある。6歳頃までの貴重な時期を、日々大事に過ごしてあげてください。
(構成・文/横田裕美子)