『“運動神経を育てる”子ども運動教室・リトルアスリートクラブ』の代表トレーナー・遠山健太さんは、「幼い時期からひとつの競技だけに特化して、そればかりやらせるというのは、おすすめできませんね。幼児期に大切なのは、体の健全な発育を促して、運動神経を育ててあげることなんです。ひとつの競技だけでは、動きの種類が限られてしまい、運動として足りません」
と、話します。また、ひとつの競技ばかりさせることは、体へのリスクも覚悟しなければならないといいます。
「体操競技などのように、早い段階から専門的な指導を受けなければ世界に通用しない競技もありますが、多くの競技はそうではありません。例えば、小さい頃から“投げる”という同じ動作ばかり繰り返していたら、ひじや肩に負担がかかり、早いうちからケガやスポーツ障害を起こす可能性が出てきます。また、ゴルフや野球など左右非対称のスポーツの場合は、筋肉がアンバランスについてしまうリスクなども出てきてしまうのです」(遠山さん 以下同)
さらに、リスクはメンタル面にも影響を及ぼす可能性も。
「英才教育の弊害としてよく言われているのは、“燃え尽き症候群”です。あまりにも早い段階からやらせすぎてしまうと、だいたい高校生くらいで燃え尽きてしまうんですね。あとは、英才教育の現場というのは、ひとにぎりの成功者がいる一方で、多くの落第者もいるのが現実です。まだまだ可能性のある小さいころに、あまり“挫折感”を味わわせてスポーツの楽しさを奪ってしまうのは、好ましくありません。それよりも、小さいころは遊びやスポーツを楽しんでいろんな体験をさせておくことのほうが大切です」
では、具体的にはどのようにスポーツに取り組ませていけばいいのでしょうか?
「10歳頃まではスポーツを本気でやる必要はありません。特に幼児期は、公園遊びや親子遊び、習い事などを通して、多種多様な動き“基本動作”をしっかり身に付けさせることが何より大切です。神経系の発達が著しいこの時期になるべく数多くの動作を経験し回路を作っておく。それこそが、将来お子さんのスポーツの選択肢を広げるだけでなく、上手にできるようになるベースになるのです。本気で目指すのは、それからでも遅くはありません!」
本気でトップアスリートを目指したい人こそ、早期英才教育ではなく、幼児期の基礎が何より大切。”急がば回れ!”ということのようです。
(構成・文/横田裕美子)