「基本的には、モラハラの人の行動は変わらないから、変えるために労力と時間を使うなら、あなたと子どもたちのこれからのために使ったほうが良いと思います」と話すのは、行政書士東京よつ葉法務オフィス心理カウンセリングルーム代表の佐藤千恵さん。
「モラハラの人は、自分が変わらなければいけないとは微塵も思っていないケースがほとんどです。自分が間違っていないと思うことを、他人から言われて変わることは、あまりないですよね。モラハラの人は特に、間違った自己像と認識を持ち、間違った区別で『こいつにはこういう扱いで良いんだ』という思いがあるからこそ、他者を攻撃するんです」(佐藤さん 以下同)
モラハラ被害者は「私がいたらなかったから」などと、自分を責める傾向も見られるそうだが、それは違うと佐藤さんは強調する。
「モラハラさんは会社や社会では良い人なので、同じことを上司がしても怒らないのに、妻がすると怒るんです。それは、妻にはそうして良いと認識しているから。結局、その認識を変えられるかどうかが、状況を変えられるかの大きな分かれ目なんです」
●変わらぬモラハラ夫には別居も有効
モラハラ夫に対し、妻は「優しくし、相手を立てる」「下手に出る」「泣いて頼む」「同じテンションで怒ってみる」「無視する」「様々な本や資料で調べる」など、試行錯誤することが多いそう。
それでもどうにもならない状況で、専門家に相談するケースが多いそうだが…。
「カウンセラーとしては、『まず別居などで、少し離れてみては?』とご提案します。離婚を考えるのは、毎日夫の影響を受けず、自分のペースが作れる安全な場で、自分の本心を見つめ、今後のことを考えてみてからでも遅くないですか、と。それでも踏ん切りがつかないという方には、期限を決めてみましょうと働きかけることもあります」
まずは自分の心の状況や、自分の家庭に何が起きているかを、きちんと知ること。正しい情報、知識を手に入れることが必要だと言う。
「解決策がわからないから、不安になり、現状維持しかないと思ってしまうだけで、暴力の構造などを正しく理解している専門家に相談すれば、警察や行政と連携し、身の安全を確保したうえで対処できる方法は必ずあります」
「子どものためにガマン」ではなく、子どものためだからこそ、泣き寝入りをやめ、一歩踏み出す勇気が必要なのかも。
(田幸和歌子+ノオト)