● 子どもの「なぜ?」をとことん深堀り
日本の最高学府、東京大学からほど近い場所にある「a.school」。大きな窓から陽光が差し込む教室は、扉で仕切られておらず開放的!無垢材が床に敷き詰められた気持ちのいい空間です。
ここでは、小学生から高校生まで、「探究・創造」を重視した学習が展開されています。週1回行われる学習コースでは、英数国理社の個別指導のほかに、60分間のモチベーションワークショップを実施。「a.school」最大の特長はこのワークショップにあるのです。
その内容について、塾長の岩田拓真さんにお話しを伺いました。
「学年ごとに進め方は違うのですが、基本的には1か月単位で1つのテーマを探究します。各生徒が出したテーマをひとつに集約させ、テーマの深掘り、まとめ、展示や発表までを実践するのですが、生徒にはアイデアの出し方をはじめ、議論、プレゼンテーションを体験してもらいます。ワークショップの具体例としては、機械の探究というテーマで、『SDカードって何であんな形なの?』という問いを深めるためSDカードについて色々な観点で調べたことがあります。問いを深掘りする過程では、記録の歴史や技術の話など、今まで知らなかったことを幅広く学ぶことになります。その経験を通して、興味を持ったことを探究するチカラと、知ることの楽しさを実感することができます」(岩田さん、以下同)
ほかにも、小学校低学年であれば、生物について探究して「メロンはなぜ網あみなのか?」や「貝はなぜ死ぬと殻が開くのか?」といった問いが出るそう。なんだか、大人でも答えに臆するような問いばかりですが、見過ごしがちな問いを徹底的に考えることは思考力の高まりにもつながるようです。
●これからの時代にあった基礎教育とは?
そもそも、岩田さんがこうした塾をはじめたきっかけは何だったのでしょうか?
「勉強を頑張るためには、『テストでいい点とったらゲーム買ってあげるよ』という外的な要因と、『知ることが楽しい』という内的なモチベーションがあると思うんです。僕自身が、楽しいと思えないと学べない子どもだったのですが、大人になってボランティアで子どもと接する機会が増えたときに、同じような子どもが多いなと思ったのが最初のきっかけでした。また、東京大学の大学院にいたころに、『i.school』という、創造的な思考力を身につけるコースを受講していたこともあり、こんな学び方が大学にできはじめているなら小中高でもできないかと思い、『a.school』のアイデアが生まれたんです」
基礎教育で重要なのは、学びへの好奇心を育てながら、実践的なディスカッションで思考力の土台をつくること。早いうちからそうした素養を詰める場は、確かに貴重かもしれません。
学ぶことへのモチベーションさえ持てれば、子どもは自然と勉強を頑張るもの。いまは目新しい「a.school」ですが、今後はこうした塾が求められていくのかもしれません。
(文・末吉陽子/やじろべえ)