「右利きに直すべきか? といえば、必ずしも直すべきということではありません。ただ、ひとつ言えることは、日本は多くの人が右利きのため、社会全体で右利き用に作られていて、何かと生活するうえで不便なんです」
そう話すのは、『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者・立石美津子さん。そこで、左利きの人が直面する不便をいくつか挙げてくださいました。
・デジカメのシャッターボタンが右にあって押しづらい
・駅の自動改札機にパスモや切符を入れにくい
・ハサミ、包丁などが右利き用に作られていて使いづらい
・電子レンジなどのスタートボタンが右にあるので押しにくい
・ラーメン屋さんのカウンターで隣人とひじがぶつかる
●書くことだけは右利きへ直すことを検討を
前例はほんの一部ですが、いろいろと不便があるようです。なかでも、もっとも不便なのは“書くこと”。
「“書くこと”は、もともと右利きの人が書きやすいようにできていて、筆順の基本は“必ず左から右に書くこと”と決まっています。つまり、筆順だけは“右利きの人に合わせなさい”という暗黙のルールがあるのです。ひらがなに限らず、ローマ字も左から右に書くようになっていますね。横書きの文章も左から右に書きます」(立石さん 以下同)
また、書くことについては、筆順のみならず物理的な不便さも。
「左利きの人は、文字が書きづらいだけでなく、自分の書いている文字が自分の手に隠れて見えづらいんです。そのため、鉛筆を持つときに向こう側から手を持ってきてかぶせるようにして書きます。そうすると、持ち方もおかしくなり、肩凝りなどの原因にもなります」
では、やはり右利きに直したほうがいいのでしょうか?
「お箸を持つ、投げる、ハサミを使うなどは、直す必要はありませんが、書くことだけに関して言えば、はじめから右手で習慣づけることが理想です。ただし、すでに左手で習慣づいてしまっている場合は、決して叱って無理に直そうとしてはいけません。左利きの子にとっては、当然左で書くことが楽ですから、途中で直すのは大変なこと。無理に矯正されると書くこと自体が嫌いになってしまい、勉強まで嫌いになってしまったら本末転倒です」
まずは、左で書けることを褒めてやることが大事だという立石さん。
「例えば、お子さんに、“左手で字が書けるなんてカッコイイね。ママには絶対にマネできないわ。もし、右手でも書けるようになると2本の鉛筆で書けるようになってスーパーマンみたい!”“左手にお箸を持ってご飯食べながら右手で絵を描けたら面白いね”などと言ってみではいかがでしょうか? 実際に両手が使えるようになるととっても便利です。あくまでも“絶対に右利き”“絶対に左利き”と、決めつけるのではなく、“できれば右に…”というテキトーでゆるい感覚でお子さんに接してあげてください」
左利きもその子の個性のひとつ。右手に直しなさい! ではなく“両手が使えたらより便利”というくらいの気持ちで声かけしてみては?
(構成・文/横田裕美子)