「子どもが包丁や火を使いたがったら、ぜひその“やりたい!”という意志を尊重してやらせてあげてほしいのです。親が一緒であることと、“止まって!”と言って止まれる子であれば、たとえ1歳でもさせてあげてください」
と、坂本さんは話します。子どもがやりたがったときに体験させてやり、その子なりにできたことを認めることが自信につながるという。
「危険だからと決めつけて、せっかくのやりたい気持ちを阻んでしまうと、その子の自尊感情を傷つけることになります。また、大人が“危ないからダメ”と危険を遠ざけることでお子さんを守ったとしても、子ども自身が危険から身を守る術を身につけることにはなりません。つまり、遠ざけることでその子は危険を経験する機会を奪われ、いきなりすごく危ないことに出くわしてしまうのです。それどころか、ダメと言われれば、“隠れてする”“親の見てないところでする”となり、マッチやライターを遠ざけても隠れて火遊びをして火事に…なんてことにもなりかねません」
親は、“子どもの将来のために今何をすべきか?”ということを考えるべきだという。
「親が子どもを守るというのは、もちろん当然のことです。でも、いつまで親が守ってあげられるのでしょうか? お子さんの将来のことを考えたら、自分で考え、判断し、自分のことを守る力を小さいうちから身につけさせてあげる。それが、子どもの自立のために親がしてやるべきことなのではないでしょうか? マッチで火をつける練習をすると同時に、消し方をきちんと教える。包丁の使い方を学ぶと同時に、刃物の危険性やマナーを教える。決して目の前から遠ざけることが守ってあげることではないのです」
●子育ての最終目的は“自尊感情”を育てること
「“台所育児”は、食の大切さを学べるだけでなく、子どもが料理をすることを通して判断力や自信、自尊感情を育み、生きる力を身につける育児法です。子育ての最終目的というのは何だと思いますか? それは、子どもの“自尊感情”を育てることなんです。これさえ育っていたら、どんな状況下でもその子は生きていけるのです」
自尊感情の大切さは、現代の社会問題にも派生しているという。
「どうか、お子さんの自尊感情を育ててあげてください。子どもを一人の人間として否定することなく見守れば、子どもは自分の体験から自分で育つのです。“育てる”ではなく“育つ”なのです。」
お子さんが生きる力を育むだけでなく、お料理上手になってくれたら、忙しいお母さんも助かりますね。仕事からヘトヘトで帰ってきたらお子さんが夕飯の用意をしてくれていたら? 温かいご飯とお味噌汁だけでも作ってくれていたら? 日ごろのお母さんへの感謝や助け合う大切さも学べる”台所育児。ぜひ、忙しいお母さんこそおすすめします!
(構成・文/横田裕美子)