職場において妊娠や出産者に対して行われる嫌がらせを指す「マタニティハラスメント」のことだけど、無理解な異性からだけでなく、意外にも同性から受ける場合も少なくないそう。
本来は同じ立場であり、理解しあえそうな同性が、マタハラを行う理由とは? 「マタハラNet」代表・小酒部さやかさんに聞いた。
●マタハラ犯、その4割は女性という事実
「マタハラNetでマタハラ被害女性186人を対象に実施した調査結果を3月に『2015年版マタハラ白書』として発表しました。その結果によると、『被害を与えた相手』は、直属の男性上司が53%、直属の女性上司が22%、女性の同僚が18%と、女性から受けた被害が全体の約4割に上りました」(小酒部さん 以下同)
さらに、同じ子育て経験がある女性からもマタハラを受けたという声もあるのだとか。
「上の世代の女性は、産休や育休がない時代を過ごし、仕事をバリバリこなしたスーパーウーマンが多いのです。『私たちの頃は~』『あんたたちはずいぶん楽で~』と、世代間に価値観の格差があるのが、ひとつの理由です」
各家庭で育児の理想像は異なるもの。何より、時代観は大きく異なる。「自分のやってきた子育て論」を主張されても…というところはあるだろう。
●マタハラ犯の怒り要因、日本の企業風土も
ただ、現実問題として、産休・育休を取る同僚の仕事をカバーする立場になれば、グチをこぼしたくなるときもあるだろう。
「産休・育休をカバーする同僚の怒りの矛先が、本来は会社に向かうべきなのに、相手に向かってしまうことは多いですね」
日本の会社員は、産休・育休以外に長期休暇をとることが難しい。すべての人が平等に有給休暇をとれる制度が必要だと、小酒部さんは言う。
「また、産休・育休をカバーする側の評価制度・対価を見落としてしまっていて、業務が増えるだけというのが現状です。すると、『妊娠・出産すればエライの?』という不満が生まれ、産休・育休を取る人と、そうでない人との間に分断が生まれてしまうんですよね」
会社では家庭のことを話さない人も多いが、こうした状況に陥らないためには、周囲の理解を得るためにも家庭の状況を伝えたりして周囲の人とコミュニケーションを日頃からとっておくことは必要。もちろん、「当然の権利」という主張ではなく、感謝の気持ちはお忘れなく。
(田幸和歌子+ノオト)