東京学芸大学教育学部准教授・松尾直博先生はこう話します。
「子どもも大人も、誰でもそうですが、人というのは環境や外界、人や物に何か働きかけて影響を及ぼしたい、変化をおこしたいという気持ちがあるんですね。成長とともに大人のいないところで人間関係を作っていくようになり、そこで何かの形で人に影響を与えたいという気持ちがあり、そのあらわれなのです」
自分が行為の“主体”であるということを感じたい、という思いが人の心理のなかにあり、その気持ちをどういうカタチであらわすかが問題だという。
「それが正しいカタチで発揮できれば、みんなのために何かを引き受けたり、いわゆる正統派のリーダーとしてみんなにいい影響を与えたりとなるのですが、それをやれる子や、そのポジションにいられる子ばかりではないので、何か裏で人間関係を操作して変化を起こしたというカタチで表われてくる場合があるのです」(松尾先生 以下同)
また、長期にわたって“仲間はずれ”の行為を続けるには、別のところに理由があるケースが多いという。
「普段から自分が主体であることを感じることができている子は、例え一時的に“仲間はずれ”に加担したとしても、注意されていけないとわかった瞬間やめる子が多いんですね。しかし、普段から親に過度にコントロールされている、嫌な習いごとをやっているなど、自分が主体であると感じられることがなかったり、ほかにストレスを感じている場合は、注意されて悪いこととわかっていても、“仲間はずれ”などの行為にこだわってしまい、もっと巧妙にして続けてしまうのです」
●わが子が“仲間はずれ”に悩んでいるときの対処法
では、わが子が“仲間はずれ”にされて悩んでいたら、どう対処したらいいのでしょうか?
「悩みを相談されたときに、一番やってはいけないことは、“あなたがモジモジしているからこうなるのよ”など、逆に責めてしまうこと。あなたが悪いというメッセージを受けてしまうと“ああ、もう大人になんて相談するもんか”と、心を閉ざしてしまい、被害が長期化・悪化することが多いんです。あくまでも、“仲間はずれ”をして傷付けている相手が悪いのだから、それに対して“やめて!”と、抗議する権利もあるし、大人に相談をして状況を改善してもらう権利もあると、とにかく気持ちを吐露できる環境、逃げ込める環境を作ってあげてください」
さらに、対処する際に重要なのは、あくまでも子ども本人の意向を重視して、親の判断で勝手に動かないことだという。
「悩みを打ち明けてきたからと言って、お子さんの意向も確認せず親御さんが動いてしまい、事態が大袈裟になってしまったり悪化したりすることもあるので、あくまでも“今後どうしてほしい?”と子どもの意向を聞いてください」
“仲間はずれ”の場合は、一過性のきまぐれで終わる場合も多いので
見極めも大切だという。
「親御さんに話したことだけで気持ちがスッキリして翌日には自然に解決する場合もあります。続く場合は、まずは先生に状況だけ伝えてしばらく様子を見守ってもらってもいいですし、もう限界だと感じたら先生から友だちに注意してもらってもいいでしょう。もちろん、例外として本人が大丈夫と言っても、長期化している、あまりにもやり方がひどい場合などは親御さんの判断で動いてもいいと思います」
仲間はずれに悩むということは、子どもが仲間になりたい気持ちがあるからこそ。親御さんが暴走して関係を悪化させないよう、あくまでお子さんの気持ちを優先して行動することが大切なようです。
(構成・文/横田裕美子)