わが子が容姿でイジメられたらどうする?

わが子が容姿でイジメられたらどうする?

第2回 子どもの日ごろの悩みにどう対処する?
子どもはとにかく言動がストレート。特に、友だちの容姿に対して“デブ!”“ブス!”“チビ!”など、心ない言葉で平気でからかったりする光景をよく目にします。もし、わが子が友だちからのそんな言葉で日々傷付けられ悩んでいたら、親はどう対処したらいいのでしょうか? また、子どもがしつこく友だちの“容姿”でからかう深層心理とは?

「子どもがなぜ“容姿”でからかうのか? というのは、簡単に言えば子どもは発達の早い段階では、目に見えないものより目に見えるものの理解のほうが強いからなのです。もう少し年齢が上がってくると言動や立ち居振る舞い、価値観、その人の考え方に対して拒絶するということになってくるのですが、それは目に見えにくく抽象度が高いですよね? それに対して容姿というのは目に見えるものなので、幼い頃から違いがわかり、それに対するボキャブラリーも早くに獲得されるんですね」

そう話すのは、東京学芸大学教育学部准教授・松尾直博先生。小さい子どもが相手を攻撃するときは、その年齢、その性別で一番効果的な方法を選択するという。

「つまり、周りの子の理解力も同じですから、性格的なことを攻撃するよりも容姿で言ったほうが周りの子もノッてくるし、何より相手に対するダメージも大きいわけです。その後も意地悪する子の文化のなかでは容姿を攻撃することが多少残っていくものの、年齢が上がっていくにつれて、自然に容姿で攻撃するなんてカッコ悪いとなっていくのです」(松尾先生 以下同)

悩む子ども

●わが子が容姿でからかわれたときの対処法

では、わが子が容姿でからかわれたとき、親がとるべき対処法とは? 容姿については、すぐに直せることではないだけに、悩みも深刻化してしまう。

「まずは、傷ついたお子さんに“あなたは何も悪くない”ということを伝えます。あなたが傷つくことを意図的に言っているほうが悪いということを明確にしてあげてください。そしてあなたの外見はまったく悪くない。お母さんは可愛いと思うし、体型などの場合にしてもそれぞれの個性であると、親が全面的に認めて失いかけている自信を取り戻してあげることが大事ですね」

そして、容姿についての攻撃というのは、明確にいけないことなので、真っ先に学校に相談してもいい問題だと松尾先生。ただし、お子さんの感じ方や深刻度もきちんと把握したうえでということが重要だという。

「お子さんのタイプや受け止め方、言ってくる友だちとの関係性などもありますので、よく話を聞き深刻度なども見極める必要があります。本人はさほど気にしてない場合もありますし、逆に親が“それくらい”と思うことでも、お子さんにとっては深刻という場合もあります。また、本人は気にしていなくても、さすがにこれは…という場合もあります。アドバイスしたり行動したりする際は、きちんと状況を把握することが何より大事です」

もちろん、わが子が加害者側にならないとは限らない。

「わが子がどちら側になったとしても、伝えなければならないことは、どんな子がいてもそういう子を認める社会でなければなないということ。世界では“多様性への寛容”という教育のキーワードがあるのですが、肌の色、風習、外見…とにかくいろんな人がいて、背景があって、それでも仲間だし、いろんな人を受け入れなければならない。これからはますます国際的な時代になっていきますし、どれだけ寛容になっていくかというのは日本の課題でもありますし、しっかり子どもたちに教育していかなければならないと思います」

子どもは目に見えるものへの理解が強いからこそ、きちんと親が目に見えないものの大切さを諭し、伝え、教育していかなければなりませんね。
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

松尾直博
松尾直博
東京学芸大学教育学部准教授。博士(心理学)
児童臨床心理学、スクールカウンセリング等 を専門領域とし、臨床心理士、学校心理士、 特別支援教育士スーパーバイザーとして、ま た幼稚園、小学校、中学校などでカウンセラ ーとしても活動している。  
児童臨床心理学、スクールカウンセリング等 を専門領域とし、臨床心理士、学校心理士、 特別支援教育士スーパーバイザーとして、ま た幼稚園、小学校、中学校などでカウンセラ ーとしても活動している。