「物のやりとりはどんどんエスカレートし、のちのちトラブルに発展しやすいので、きちんと事前、または事が起こったときに家庭内のルール、方針を子どもに言い聞かせておくことが大事ですね」
そう話すのは、東京学芸大学教育学部准教授・松尾直博先生。
確かに、ちょっと強い子から“ちょうだい”と言われたとき、イヤでも自分の意志できっぱり断れない子もいるだろう。だからこそ、“家庭のルール”がわが子を守る盾になるという。
「ご家庭で、“所有物”ということに関してきちんと話をしてください。“あなたの物にはすべてお金がかかっていて、どれも大切な物だから、基本的にはあげてはいけない”と。そして、“たとえ他の子がいいと言っても、これはお母さんに言われてることでウチのルールだから、一緒に使ったり見たりすることはできるけど、あげられないよ”と、きちんと伝えるようにと話します。もちろん、お友だちの物についても同じように大切なので、“ちょうだい”と簡単に言ってはいけないと話します」
それと同時に、もらっていいケース、あげていいケースについてもきちんと話して、その線引きをその都度学んでいくことが大事だそう。
「とにかく、物のやりとりに関してはなあなあにさせないことです。例えば、どうしてもお友だちに何かあげたいのなら、“誕生日や何かの節目のときに心を込めてプレゼントしようね”と提案したり、お友だちの家に遊びに行ったときにお菓子をいただいたら、“それはいただいてもいいよ。そのときは、きちんとお礼を言ってからいただこうね”など、物をもらう・あげるはもちろん、貸し借りも含め、いろいろなケースに対してどう対処していくかを学ばせていくことが大切です」
これらの経験は、将来のためにとても大切な練習だと松尾先生は話します。
「金品のやりとりというのは、どうしてもエスカレートしてしまいますね。もらう側は一度手に入ればどんどん欲しくなってしまうし、あげる側はあげればかまってもらえる、人気者になれるとどんどんあげてしまうケースもあります」
それが文房具だけで済まなくなり、ゲームソフトに…なんていうことにもなりかねない。
「大人でもそうですが、金品が絡むことで純粋な信頼関係や友情関係とは違うものが入ってきて歯止めがきかなくなりトラブルに発展するケースもよくあります。信頼や友情というのは物のやりとりではなく、一緒にいて楽しいとか、困っているときに助けてあげるとか、そういう関係で成り立っているんだということを子どもたちにきちんと伝えていかなければならないと思います」
子ども社会はまさに将来の大人社会への重要なステップ。そこでいろんな経験をし、一つひとつ学ぶことこそがお子さんが将来を生き抜く術となるのです。
(構成・文/横田裕美子)