「ひと言でいえば、白髪治療に対する仮説は立てられても、臨床実験が難しいからです。髪は7年間くらいで、生え変わります。およそ10万本生えている髪の毛のなかから、1本をずっと研究し続けることはかなり困難なのです」(桑満先生 以下同)
白髪に特化した実験は、現状では難しいよう。ところが、桑満先生によれば「白血病の治療中だった白髪の人に黒髪が増えた」ケースがあったのだとか。
●白髪の特効薬が将来誕生する可能性は?
「この例は、医学的な臨床実験を行ったわけではありません。でも、抗がん剤にはガン細胞を増殖するのを抑制する効果があります。それが白髪を作る全体のサイクルを遅くする一方、髪の毛を黒くするメラノサイトを作るペースだけは落ちないように作用したのかもしれません。結果、白髪が増えなかったのではと考えられます。とはいっても、抗がん剤を白髪の特効薬として使うことはできないですよね」
うーん、白髪を“治す”のはかなり厳しい道のり…。だからといって、研究が進んでいないわけではないとのこと。実は、ノーベル賞受賞で注目を集めた「iPS細胞」が白髪の改善に役立つと見込まれているのだとか。
「近年、細胞を無限に培養できるiPS細胞などの幹細胞系研究が一気に進展して、これまでは入手困難だった大人の色素細胞を大量に入手できるようになりました。さまざまな実験の結果から、白髪を黒くするために必要な色素幹細胞の秘密が、研究施設によって解明されてきています。たとえば、花王の研究グループは、白髪の人と黒髪の人の毛根から遺伝子を分析し、毛髪の根元にあるたんぱく質FGF(線維芽細胞増殖因子)の量に差があることを突き詰めています。花王はこの成果をもとに、白髪の予防剤などの開発を目指しているそうですよ」
白髪の治療薬ができるまでどれくらいかかるはわからないけれど、もしかしたら近い将来実現するのかも? 今後の医学や科学の進展に期待大ですね!
(パンチ広沢+ノオト)