「共依存=引きこもりと、一概に断言はしにくいですが、引きこもりによって、さらに共依存関係が強化されるということは言えます。特に多く見られるのは、高齢の母親と独身の息子のケース。介護の現場で悲惨な事件に至る多くがこのパターンですし、何ともグロテスクな親子関係と言えます。でも、今現在、全国にたくさん存在するんですよ」(信田氏。以下同。)
信田氏のカウンセリングセンターを訪れる、引きこもりに悩む親は、皆、決めゼリフのようにこう嘆くそうだ。
「“息子が出て行ってくれないんです…先生どうしたらいいですか?”と、みなさん開口一番そうおっしゃいますね。子どもが出ていくのを待つのではなく、親が自ら子どもを手放さなければいけないんですよ。皆さんそれに気づいていないんです。面倒だからほおっておくのではなく、信頼しているからこそ子どもと離れていく…これこそが、思春期以降のお子さんを抱えたお母様方に必要なこと。大事なお子さんの持つ力を奪わないで欲しいと思います」
●親子共依存は、引きこもりとリンクする!?
さらに厄介なのが、引きこもりの子を持つ親は、みな一様にエネルギーがあり、若くて元気であること。
「“自分がいないとこの子はダメになってしまう…”そんな思い込みが、彼女たちの若さを維持し、エネルギーを与えるんですね。もちろん母親が若くて元気なのはいいことですが、そのエネルギーをいい歳をした息子や娘のために使ってはいけない。そう考えると、やはり親子共依存の問題は、引きこもりとリンクしていると考えていいのかもしれません」
「親子仲が良くて、周りに迷惑かけないんだから、どうしようと私たちの勝手でしょ?」そう主張する親もいるが、そうした家庭は決して健全でなく、暴言があふれているのが常であると信田氏は語る。将来、極めて不幸な親子共依存にならないように…親が肝に銘じ、今から心がけておけば、きっと望まぬ未来から回避されるはずだ。
(取材・文/蓮池由美子)