「実際に訴訟になったケースで、夏に気を付けたい事例があります。中学生4人と小学生ひとりの子どもたちが夜に公園で花火をしました。最初、手持ちの花火を楽しんでいたのですが、だんだん盛り上がり、打ち上げ花火でお子さんのひとりがケガをし、裁判になったことがありました」
花火のケガが裁判にまで発展した理由は、どんな点にあるの?
「5人の子どものうち、打ち上げ花火に火をつけて友だちにケガをさせた子どもは、賠償責任がある不法行為にあたるとされました。ここで重要なのは、親に監督義務違反があるかどうかです。この事例でいうと、子どもを送り出す際、公園で未成年者だけで花火をすると聞いていたのに、付き添いもせずに送り出した。花火を危険な形で遊ぶことも予想できたので、監督不十分と認められたということです。結果、治療費などを支払うことになりました」
●賠償責任の焦点は、親が監督義務を果たしていたかどうか
松村先生によると、トラブルが起きても賠償責任を負うことになるかはケースバイケースだそう。
「子ども同士で起きた事故やケガで、賠償責任があるかを判断する法律の条文は民法714条にあります。まず、子どもは未成年であるかぎり賠償責任については問われません」
こういったトラブルでは、賠償責任のない子どもの代わりに、親が損害賠償金を払う義務がある。ただし、親がちゃんと監督していれば賠償しなくていいということになる。
「最近の事例に、11歳の子どもが学校の校庭で蹴ったサッカーボールが道路に飛んでしまい、たまたま走っているバイクがボールを避けようとして転倒して死亡したケースがありました。子どもが校庭を通常の使い方をしていた場合には、親が子どもの監督義務を怠っていたとはいえないとして賠償責任を否定した裁判例も出ています」
子どもが大きなケガをさせられた、相手にさせてしまった場合、いきなり弁護士に相談するのは敷居が高い気もする。その場合は、区役所などの無料の法律相談を利用するとよいそう。自分たちだけでは解決できない場合、専門家の意見を取り入れるのも子を守るひとつの手段といえそうだ。
(石水典子+ノオト)