なぜ親は、わが子を大学に行かせるのか?

第3回 子どもに”勉強すること”の意義をうまく伝えるには!?
「就職への窓口を広げるため、わが子を名門大学に入れたい!」そんな夢を抱く親も多いはず。身を粉にして働きながら、1年間で、塾に100万、私立学校に100万と高額なお金を投じ、子どもを難関大学に…。そう考える親も少なくないが、はたして今の大学には、そこまでして通わせる意味があるのだろうか? そもそも大学に通う意義とは? 受験の専門家で、「V-net教育相談事務所」を主宰する松永暢史氏に聞いた。

●自分の考えを文章化する能力がなければ、大学に通う意味がない!

「大学とは、本来、どうしても素通りできない“あること”を極めたいと思う意志と熱意を持って行くべき場所。学者や専門家の話を聞いて理解し、わからないところはきちんと質問して、自分の考えを文章化する。そこまでの能力を兼ね備えた者たちを対象とした高等教育が行なわれる場所です。つまり、本を読んで理解し、自分の考えを文章にまとめる能力がなければ、大学に行っても意味がない。いくら選択肢や暗記の試験ができても、本を読み、自分で考えて文章化する能力がなければ意味がないと言えます」(松永氏。以下同)

大学側も当然、この点については気づいているであろう。

「自分で本が読めて、自分の考えをまとめて文章化する能力があれば、どの大学も欲しがる人材ということになりますが、今の日本では、若干18歳で学者の書いた本が読め、自分の考えを文章化できる人材はごくわずか。東西のとある私立難関大の代表は、“我々が本当に相手にしているのは5%の学生”と言っています。そこまでひどいことはないと思いますが、これが半ば本当だとすると、大学に通う学生の約95%は、教授に相手にされていない、単なる“お客さん”であるわけです」

なぜ親は、わが子を大学に行かせるのか?

だが、その事実を裏返せば、「日本の社会や教育が、大学で学ぶのに相応しい人材を、きちんと育てていないことの証なのだ」と松永氏は語る。

ただ授業に出て、教養課程だけを身につけ、サークルやコンパに明け暮れた後は、就活に追われる日々…これではいったい、何のために数百万もかけて大学に通ったのかわからない。そうならないためにも、親はしっかりとした国語力そして文章力を身につけ、大学側に相手にしてもらえる人材に育てること。でなければ、大学に行く本当の価値は見いだせないのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

松永暢史
松永暢史
「V-net教育相談事務所」主宰
'57年、東京都生まれ。都立西高を経て、慶応大学文学部哲学科卒。受験プロ、教育環境設定コンサルタント、能力開発インストラクターとして子どもや親たちを指導している。主著に「男の子を伸ばす母親は、ここが違う!」「結婚できない男は、12歳までにつくられる」(ワニプラス新書)、「こんな働く母親が、子供を伸ばす!」(扶桑社)がある。
'57年、東京都生まれ。都立西高を経て、慶応大学文学部哲学科卒。受験プロ、教育環境設定コンサルタント、能力開発インストラクターとして子どもや親たちを指導している。主著に「男の子を伸ばす母親は、ここが違う!」「結婚できない男は、12歳までにつくられる」(ワニプラス新書)、「こんな働く母親が、子供を伸ばす!」(扶桑社)がある。