●社会に出るまでは助走!しっかりしたホップステップジャンプを踏ませるべき
「まず“子どもに媚びない!”これが基本です。でも怒る時は、“おらあ!”と感情で怒らず、“こんなことしたらアカン…今のママに対する返しはない”と冷静に諭しますね。それだけで、子どもたちの背筋はピーンとするし、テンションも下がる。半べそで泣きそうなのを見ていると、胸は傷むみます。たまにしか大阪に帰られへんのに、晩飯も、今月は今日しか一緒に食われへんのに、本当はそんな時に怒るなんてしたくない。でも、何のために僕が存在しているのかと言うと、あの子らが大人になった時、“小籔がうちの部に配属になったんやけど、できるしええヤツやわ~”そう言われたいわけですよね。彼らが幸せな家庭を作って、挨拶ができて、ちゃんと自立した大人になるために存在しているわけなんです。そうなると、なんでも甘やかして子どもに媚びて好かれようとする行為は、将来のためになるかと言ったら絶対ならへんと思うんですよ。僕と嫁はんが雲の上から見下ろした時、“ええ子育てしたな”と思えるようにしたいんです」(小籔氏 以下同)
「偉そうなこと言ってますけど、自分の育児が正解かどうか、わが子が40歳を過ぎた頃に、やっと結果がわかるのかもしれない…」そう真剣な眼差しで語る小籔。ただ、親として社会人の先輩として、“これからの子どもたちにこれだけは伝えたい”というメッセージがある。
「社会人になるまでは助走なんですよ。社会人として自立するまでが助走なら、親は子に、しっかりホップステップジャンプを踏ませるべきなんです。子どもの頃に、蝶よ花よと甘やかしていたら、社会に出てからとんでもないことになる。鬱陶しいヤツもおるし、理不尽なこともある、この世のなか、努力が報われへんことなんか山ほどあるじゃないですか。もちろん、夢が叶うことや思わぬラッキーもあるでしょうけど、これから危険なジャングルに行く子に親としてどちらを教えてあげた方がいいかとなると、“蛇もいるかもしれん、クモもいるかもしれん、寒いぞ~食うもんないぞ~”と、そっちを教えておいてあげた方がええと思うんですよ」
子どもを一時の感情で叱るのではなく、対等に冷静に向き合い、「こうしないといずれこうなる」という仕組みをしっかりと理解させるのが小籔流。
「いずれは、困難が待ち受ける世界に子どもを放出するんです。それは誰もが通る道で、決定なんですよ。“お前挨拶できなかったら会社クビになるぞ”“ありがとうって言えへんかったらどんなことになるのかわかってる?”“勉強せえと意地悪で言うてるわけやない。最終的に困るのは自分や!”と。だから僕は、目に余った時はしっかり怒りますが、一日くらい経った後、“あの時ああ言ったのは、意地悪じゃないんやで。パパはいっぱい大人を見てるけど、挨拶せえへんヤツは要領良くても、後に嫌われて仕事なくなったりすんねん(笑)。挨拶ができて優しい人は、後輩におごったりして一瞬損すんねん。でも、そのおごった分以上のええことが待ってるんやで”と諭すようにしています」
「こんなん言うてると、“すごくいいお父さんなんですね!”とか、キャバクラでよう言われるんですけどね」と笑いに変える小籔。
「僕は、家族思いでも愛妻家でもなくて、ただ、日本男児として生まれた以上は、自分が築いた家族にお金を渡す…これは必要最低限のことだと思っています。結婚した時に貧乏させたトラウマもありますが、これは男としては絶対にしなければならないこと。僕は家事もろくにできないし、ただ家族のために馬車馬のように働き、生活費、教育費、並びに医療費、福祉費を捻出するためだけのサイボーグなんです(笑)。日本男児としての責務をまっとうしてるだけですから…」
親として社会人の先輩として、わが子にこれから襲われるであろう荒波をしっかりと伝えること。つらいこと、苦しいことも体験に変え、きちんとしたホップステップジャンプを踏ませてあげること。転ばぬ先の杖とばかり、子どもを守っていては、華麗なジャンプは飛べないのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子 撮影/田子芙蓉)