父はスマートフォンに興味がないみたい
「なんだか操作が難しそうだな、俺はいいよ」。そう言って、父は今でも二つ折りの携帯電話を使っている。かわいがっている孫の写真をメールで送ったときも、小さな画面で目を凝らして見ていた。「スマートフォンなら大きな画面で写真を見ることができるのに……」。そう私が言っても、頑固な父は聞こうとしない。
もう、家族がどれだけ言っても無駄だろう。そう諦めていたときに、ドコモショップがシニア向けにスマホ教室をやっているのを目にした。しかも参加料金は無料だという。
そこでふと思いついた。どれだけスマホの操作がカンタンかを教えてもらえば、父もスマホに興味がわくんじゃないか？
父、はじめてのスマホ教室
次の週末に父をスマホ教室に送り出した。「孫の写真を大きく見るやり方を教えてくれるから」と伝えると、とりあえず行ってみる気になったらしい。
とはいえ、なんだかちょっと心配になったので、こっそり後をついていく。父がドコモショップに入り、奥のテーブルに座ると、お店の人がやってきた。どうやら、店舗のスタッフの方が使い方を教えてくれるらしい。今回の参加者は父一人だけのようで、さっそく「孫の写真が見たいんだ」と話しかけている。とはいえ、いきなりそんなことを言って、相手に伝わるんだろうか？
でも、そんな父にスタッフの方が親身になって話を聞いていた。
「お孫さんがいらっしゃるんですね。お住まいはどちらですか？」
「お孫さんの写真を送ってもらったけど、画面が小さくて見づらかったんですね」
「そうですか、スマートフォンで写真を見る方法をお知りになりたいんですね」
どうやら、父の目的を上手く聞き出してくれたらしい。さっそくスタッフの人が手に持ったスマホでメッセージアプリを起動する操作を見せて、父がそれをマネしている。でも、いきなりつまずいてしまったようで、なんだかピタッと固まってしまった。
「大丈夫ですよ。ほら、これってATMの操作みたいなものなんです。こうやって順番に画面を押していくだけですから、一緒にやってみてください」
なるほど、ATMなら父もよく使っている。そう言われて、こんなに簡単なら、と父もやる気になったようだ。アプリを起動して、届いたメッセージを読むところまではスムーズに進むようになった。添付された写真を拡大して表示する方法も教えてもらったらしい。次はメッセージを送る操作のようだが、今まで携帯電話では通話機能しか使ったことがなかった父に、文字入力なんてできるのだろうか？
「大丈夫ですよ、このスマートフォンは声で文字を入力できるんです」
あっ、そういえばそんな機能があったっけ！