それだけ「ケンカのときの親の態度」が子どもの心を傷つける可能性があるということだろう。
「きょうだいゲンカに対する親の接し方で、いちばんいけないのは、上の子を『お兄ちゃんなんだから』『お姉ちゃんなんだから』と叱ることです」と言うのは、NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子さん。
「幼いころのケンカの多くは、上の子の行動に下の子が悪気なく手を出して邪魔をし、『やめてよ!』と押したら泣いた、というようなものですよね」(菅原さん 以下同)
上の子にとっては、下の子が「自分を邪魔した者」であり、挙句、自分が「お兄ちゃんなんだから貸してあげなさい」「お姉ちゃんなんだからガマンしなさい」と怒られると、下の子に対する小さな不満が積もっていくそう。
「上の子の不満がたまると、下の子をかわいいと思えなくなってしまいます。親の『お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから!』は、実質的に上が下を思う気持ちを萎えさせる行為です。兄弟不仲の種をまく行為なのです」
●きょうだい仲円満の秘けつは、上を立てること
幼いころにまかれた種は、どんどん芽が育つもの。幼いころだからこそ忘れられない記憶になり、不満が募るそうだ。
「きょうだいを仲良く育てようと思ったら、トップをトップとして置いておくことが大切です。お兄ちゃん・お姉ちゃんを大事に立てておくと、何かというと上のもとに集まるようになります」
また、上の子も自分を頼ってくる下の子を、邪険に扱えなくなり、かわいがろうとしたり、公平になれたりするそうだ。
「上の子にガマンさせると、親のいないところで下の子につらくあたるようになります。すると、下の子は親に言いつける。悪循環しか生まれません」
きょうだい仲を良くするためには、まずは上を大事にすること。すると、上は下を大事にするようになり、下も上を慕うようになるそう。
親の言うことが通じる上の子のほうを叱るのは簡単だけど、それが後々まで子どもの心を傷つける可能性がある。まずは「お兄ちゃんなんだから」「お姉ちゃんなんだから」を封印してみませんか?
(田幸和歌子+ノオト)