「期待に胸をふくらませて入学して早々、周りのお友だちがサラサラと文字を書いたり数字をなんでもなく数えているのを見て“僕は(私は)みんなと同じようにできない…”と、いきなり劣等感を持ってしまっては、なんとも可哀想です。でもそれは、決して頭の良し悪しではなく、幼児期に知的な環境に触れてきたかこなかったかの違いだけなのです。だからこそ、入学前にある程度は触れさせて素地を作っておいてあげたいものです」
そう話すのは、これまで7000人以上の幼児を指導してきた子育て本著者の立石美津子さん。
●読み書きは、“読み”を優先させ、読めてから書かせよう!
学習の基本のキと言えば、読み書き算数。では、具体的に“読み書き”ではどのような準備をしておけばいのでしょうか?
「ひらがなの読み書きの場合、いきなり文字を書くことを練習させるのではなく、読みを優先させましょう。それは、“あ”の文字をなんと読むかわからないまま書いているのは、ただ絵を写していることと同じことだからです。つまり、焦って小さいうちから書かせても“あ”の字型が頭に入っていなければ書くことはなかなか難しいのです。2歳くらいから絵本などで文字を読むことを少しずつはじめて、字のイメージが頭に入ったところで5歳から書かせても入学までに十分間に合います。どうか焦らず小さいうちはまずたくさんの絵本を通して文字に興味を持たせることや、お話の理解力をしっかり身に付けさせてあげてください」
●算数=計算力ではありません!
では、算数はどのような準備が必要なのでしょうか?
「“算数力を身に付けましょう”というと、“計算ドリルをさせなきゃ”などと、お子さんを机に向かわせて意気込んでしまいがちですね。でも、算数力というのは、計算力だけではありません。むしろ、算数は重さや長さ、お金の計算など、生活ととても密着した科目なのです」
だからこそ、机上の勉強ではなく、まずは生活の中で数字のさまざまな“概念”を経験させることが何より大事だと、立石先生は話します。
「例えば、おやつのときにビスケットの枚数を数える、分ける。お買いものでお金の概念を学ぶ。日々時計を意識することで時間の概念を身につける。長さや重さは、例えばお子さんの身長や体重を話題にして“○センチ伸びたね”とか、体重計に乗らせて“○グラム増えたね”なんて言ってあげると身近に感じ理解しやすいですね。そこで重さの概念が少し頭に入っている子は、スーパーに行ってお肉のパックを見て“僕の体重はこれくらい増えたんだ”なんて気づけるようになったりします。こうやって子どもは実生活のなかからたくさんのことを学びとっていきます。計算力がいくらあっても、こういう経験をしていない子は文章題でつまづいてしまうケースも多いので気を付けてくださいね!」
入学前は机上の勉強よりも、生活の中でのさまざまな経験をとおして、学力につながる基盤を作っておくことが何より大切のようです。
(構成・文/横田裕美子)