ギャングエイジは将来への大事な成長過程?

第2回 子どものギャングエイジをどう乗り切る?
小学校中学年(3・4年生)くらいになると、それまで以上に友だちや仲間を求め、影響を受け、親や大人の干渉から逃れて集団で活発に遊んだり行動するようになる。この時期のことを、児童心理学ではギャングエイジと呼ぶ。実は、この時期の経験が子どもの将来への重要な成長過程となるという。その理由とは?

東京学芸大学教育学部准教授・松尾直博先生はこう話します。

「大人の居ないところで同世代のグループで行動し人間関係を経験することで、競争したり協力したり、ルールなんかも自分たちで作っていくんです。そのなかでさらに、思いやること、我慢すること、人付き合いの仕方、揉めたときの妥協の仕方、仲裁の仕方、交渉の仕方、責任を果たすことなど、大人がコントロールしてくれない分、将来生きていくうえでとても大事なことを学ぶんですね」

また、こういう経験が不足すると、精神的にいろいろと不安定になる思春期以降に影響を及ぼす可能性もあるという。

「ただでさえ不安定になりやすい思春期の前に、同世代の仲間のなかで人間関係を構築する力を学ばずに思春期に突入してしまうと、友たち関係でこじれやすくなってしまうんですね。つまり、落としどころを知らない、やりすぎを知らない、止め方を知らない…。結果的にはいじめにつながってしまったり、変な上下関係が発生してしまったり、思春期以降にそういうことが起こってしまうんです」(松尾先生 以下同)


ギャングエイジ

つまり、小さいころは親もとで自己中心的に生きてきた子どもたちも、同世代の仲間のなかで心理的な葛藤を通して成長していくのだ。

「親御さんとしては自分が見ていないところで子どもたちだけで行動するようになることは、ちょっと不安もあると思いますが、そういった経験をお子さんが求めているのであれば、様々な経験ができる大事な時期であることを理解し、安全面に配慮したうえで必要な経験はなるべくさせてあげられる環境づくりをしてあげてほしいですね」

もちろん、こういった活動を必ずお子さんに経験させなければならないということではないと、松尾先生は話します。

「お子さんの性格もありますし、友だちとの出会いのタイミングもあります。強要することでは決してなくて、気の合う友だちが居ない時期なら、ひとりで過ごしたり、家族や兄妹と過ごすことも大切です。また、この時期に経験しないでもっと先で経験する子もいるでしょう。あくまでも、お子さんの主体性が一番大事ですので、そこを大切にしてあげてください」

いつまでも子どもと思っていた我が子も、“小さな子ども社会”の仲間たちとともに喜び、葛藤しながら日々修業する時期。親としては、成長する姿を見守り、出来る限りサポートしてあげたいものですね。
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

松尾直博
松尾直博
東京学芸大学教育学部准教授。博士(心理学)
児童臨床心理学、スクールカウンセリング等 を専門領域とし、臨床心理士、学校心理士、 特別支援教育士スーパーバイザーとして、ま た幼稚園、小学校、中学校などでカウンセラ ーとしても活動している。  
児童臨床心理学、スクールカウンセリング等 を専門領域とし、臨床心理士、学校心理士、 特別支援教育士スーパーバイザーとして、ま た幼稚園、小学校、中学校などでカウンセラ ーとしても活動している。