「昔は、子どもたちが親の目を盗んで近所の空き地に集まって秘密基地を作って…なんていう光景は当たり前でしたね。しかし、今は都心など地域によってはギャングエイジの子どもたちがギャンググループを作って遊ばなくなっているんです」
そう話すのは、東京学芸大学教育学部准教授・松尾直博先生。その背景には、現代社会の環境の変化が大きく影響しているという。
「少子化の影響や、昔のように子どもたちが好きに遊べる空き地のような遊ぶ場所がないこと、さらにお子さんの防犯上の問題など、ギャンググループで活動したくてもしづらい環境になってしまっているんです。そうなると、親御さんも大人の目があるところでもいいから同世代と何か活動をする場所を設けてやりたいと習い事をさせたりする。そうなると、ますます子どもたちは放課後にギャンググループを作りにくくなってしまうんです」(松尾先生 以下同)
つまり、ギャングエイジの時期に子ども同士だけのなかでの人間関係を学ばないまま思春期を迎えている子が増えているのだ。その結果として、友だち関係がうまくいかなかったり、自分の感情をコントロールできないということにつながる危険性があるということも指摘されているという。では、今後は大人たちはどのように環境づくりをしていったらいいのだろうか。
「自然発生的にギャンググループが生まれにくいならば、それを嘆いていてもしょうがないので、新しいカタチでギャングエイジの必要な経験をさせるような仕組みや環境を作っていかなければいけないと思いますね。今すぐできる身近なことであれば、安全面に配慮された学校の校庭解放や児童館、プレイパークなどで積極的に遊ばせるのもいいと思います。あとは、例えば家で友だちを呼んで遊ぶ際などにも、親はなるべく口出しはせず見て見ぬふりをして、子どもたち同士で取り決めさせたり、揉めても自分たちで解決させるなど、あえて子どもたちに“経験させよう”という意識をもって見守ることが大事ですね」
昔はこうだったのに…と、嘆くのではなく、親として今してやれることは何かを考え、経験できる環境づくりをしてあげる。その経験こそが、将来子どもが逞しく生きていくための術になるのだから。
(構成・文/横田裕美子)