『卒婚のススメ』(静山社文庫)著者の杉山由美子さんは、次のように指摘する。
「『卒婚』に向いていないのは、『○○すべき』という固定観念を強く持ちすぎる人。実は妻のほうが『良い家庭』『良い妻』に縛られていることが多く、それをプレッシャーに感じ、家庭の責任を背負いすぎている傾向があります」(杉山さん 以下同)
人はもともと一人ひとりが違う人間であり、やりたいことや、行きたい場所、見たいものなどが異なっていて当たり前。わかりあえない他人同士が一緒に暮らしているのだから、それを認め合えることが必要だ。
ところが、現実には「こうあるべき」という理想像で自分を縛り、また、家族で縛り合い、遠慮し合ってしまう人が多いという。その結果、ストレスを溜め込み、ふとしたときに爆発させてしまうというパターンだ。
●依存しあう夫婦や孤独に弱い人も卒婚はムリ
また、特に自分でやりたいことがあるわけでもなく、ただ相手に不満や愚痴を言うことが無自覚のうちに趣味になってしまっている人の場合、「卒婚」しても不満は解消されないそう。
「ほかにも、お互いに自分ひとりではいられず、依存しあっている夫婦や、孤独に弱い人はやはり『卒婚』に向きません。もともと老いは寂しいもの。体が悪くなったり、友だちが徐々にいなくなったり、孤独になっていくもので、耐えられず何かにしがみつくタイプは難しいと思います」
さらに、一般的には美徳とされそうな「我慢強い人」も卒婚には向かないと杉山さんはいう。
「お互いに結婚生活や相手に対し、我慢しすぎている夫婦が多いですよね。真面目すぎるのです。適当に自分が生きやすい方法を見つけていくことのできる人が、『卒婚』に向いている人だと思います」
夫婦であっても、すべて分かり合えるわけではないし、離れたほうが互いに良い距離を保てるときもある。また、超高齢社会においては、孤独を受け入れることが必要なときもある。
自分を見つめ、自分のやりたいことを探し、やってみる。それが「卒婚」ができる、また、我慢せずに楽しく夫婦生活を営むうえでも重要な秘けつといえそうだ。
(田幸和歌子+ノオト)