放任主義の子育て法。ほったらかしとの違いや子どもを伸ばす関わり方

第122回 みんなが共感!ママのお悩み
放任主義とは、子どもの意志を尊重する教育方針です。子どもの自立を促すのに最適といわれますが、ほったらかしと混同する人も少なくありません。放任主義のポイントやほったらかしとの違い、放任主義を効果的に実施する上での注意点を紹介します。

放任主義の子育てとは

放任主義を「子どもに干渉せずに育てること」などと解釈しているパパ・ママは多いかもしれません。しかし、実際の放任主義は、「ただ子どもに干渉しないこと」を意味するわけではありません。放任主義の子育てとはどのようなものなのか紹介します。

子どもの自主性を尊重すること

放任主義とは、子どもの選択を優先し親が陰からサポートする教育方針です。答えを先回りして教えないことで、子どもが自分の意志で判断したり実行したりする力を養います。

たとえば、お手伝いをするとき、放任主義では親が細かい指示を出しません。「何をどのくらいするか」の決定権をもつのは子どもです。後始末や掃除が必要になったときも、最後まで子どもの責任でやらせます。

ほったらかしとの違いは?

我が子が他人に迷惑を掛ける様子を目にしても、「うちは放任主義だから」と注意をしない親が散見されます。これは、放任主義と「ほったらかし」を間違えているケースかもしれません。

ほったらかしと放任主義では、親の子どもへの係わり方がまったく異なります。両者の違いについて見ていきましょう。

親が子どもに関心を持っていない

ほったらかしとは、子どもが社会で生きていく上で必要なマナーやルール・規範などを親が教えずに放置している状態です。子どもの背後には常に親がいることをきちんと感じさせてあげる必要があります。

たとえば、以下のような子どもの行動を許すのは、放任主義ではなくほったらかしといえるでしょう。

・他人に迷惑をかける行為
・子どもが公共のものを大切にしない行為
・信号を無視して道路へ飛び出すなどの危険な行為

家庭の教育方針にかかわらず、将来子どもが社会になじめるように親は「土台作り」をしてあげる義務があります。

子どもが間違ったことをしても指摘しない・修正してあげないのは、親の義務や子どもの将来を無視した行為といえるでしょう。

放任主義では、社会生活に必要なルールやマナーを教えた上で子どもに決定権を委ねます。決して子どもに「やりたい放題やらせる」わけではありません。

ほったらかしが生む放置子が問題に

近年は、親の無関心が生み出した「放置子」が問題視されています。たとえば、放置子によるトラブルとしてよくあるのが以下のケースです。

・朝から晩まで居座る
・勝手に他人の家の冷蔵庫を開ける
・約束なしで家に来る
・他人の家の物を勝手に持ち帰る
・食べもの・飲みものをねだる

親がきちんとしつけをしたり社会ルールを教えたりしている家庭なら、「約束なしで家に行くこと」「遅くまで居座ること」は「迷惑だから止めなさい」と言うでしょう。あるいは、「他人の家の物を持ち帰ったり、あれこれ要求したりしてはいけない」と教えられています。

しかし、ほったらかしで育っている子どもには、我慢することの大切さや人との適切な係わり方を学ぶ機会がありません。悪いことをしても親は注意しないため、子どもは本能のおもむくまま、社会ルールにそぐわない行動を続けてしまいます。

放任主義で育つ子どもの性格や特徴

我が家の教育方針として放任主義を選択する家庭は、どのような効果を期待しているのでしょうか?放任主義によって得やすいとされる子どもの性格や、懸念される特徴などを見ていきましょう。

自分で考えて行動ができる

放任主義を実践する家庭では、子どもが自分で考えたり選んだりする場面が多くなります。親があれこれと世話を焼かないぶん、自分で考えて行動する力が育まれます。

「子どもにすべて任せていたら、失敗したり時間がかかったりするばかりでは?」と思うパパ・ママもいるかもしれません。しかしそうなっても、それは子どもの責任です。「失敗を繰り返して学ばせること」も、放任主義の子育ての一部といえます。

自己肯定感が高くなる

放任主義では、基本的には親が子どもの行動を規制したり否定したりすることがありません。子どもは親に「信頼されている」「受け入れられている」という安心感を得やすく、自分を「価値ある存在」として認めやすくなります。

また、自分で何かを決めて達成すれば、「小さな成功体験」が子どものなかに積み上がっていきます。自信の源となり、子どもは何に対しても前向きな気持ちを持てるようになるでしょう。

もちろん、ときには失敗することもありますが、失敗体験が子どもの失敗への免疫力を高めてくれます。「失敗してもいいや」と大らかに構えやすく、新しいことや難しいことでも気軽にチャレンジしてみようとするのです。

寂しさを感じる子もいる

放任主義は、子どもを「小さな大人」として扱います。そのため、ほかの家庭よりも親子関係がドライに見えるかもしれません。

過干渉な親はあれこれと子どもの世話を焼きますが、これは分かりやすい愛情ともいえます。よその家庭の親が我が子にべったりな様子を見れば、「うらやましいな」と感じる子どももいるでしょう。

放任主義の親は基本的に子どもにあれこれ言わず、子どもの決めたことを尊重します。何も言わないのも親の愛情なのですが、小さな子どもには伝わりづらいこともあります。

放任主義で子育てをするポイント

放任主義は、子どもに愛情をかけつつも「見守ること」が大切です。やり方を間違えると「ほったらかし」になるおそれがあるため、放任主義で「すべきこと」「してはいけないこと」を理解しておきましょう。放任主義で子育てをするとき、気を付けたいポイントを紹介します。

すぐに口や手を出さない

放任主義の子育てで大切なのは「親が子どもの先回りをしないこと」です。特に子どもが小さい場合、本人に任せていては時間がかかったり正しいものを選べなかったりするでしょう。

親はついつい「こうしたら?」などと正解に導きたくなりますが、ここはグッと我慢です。放任主義で育つ子どもは自分で考えて行動し、その結果を受けとめて成長していきます。

失敗も成功も子ども本人に体験させることが重要なため、親がいちいち手を出すべきではありません。「放任主義は子どもに構わなくてよいから、楽そう」などとイメージする人もいますが、実際はその逆です。親は見ていることしかできないため、ストレスがたまることが多いでしょう。

悪いことをしたら叱る

放任主義の子育てでも、子どもを叱るのは親の義務です。子どもが悪いことをしたときは親がきちんと対応しましょう。

たとえば「刃物を持ってふざける」「高いところに上る」などの行為は、子どもの自主性云々の問題ではありません。すぐに止めさせて、注意する必要があります。

また、「友だちの物を取る」「人に悪い言葉を言う」などがあった場合もしっかりと叱りましょう。叱るときは頭ごなしに怒鳴るのでなく、「何がいけないのか」「どうすべきなのか」をきちんと子どもに分からせることが大切です。

社会のルールはしっかり教える

基本的な「してよいこと」「してはいけないこと」が分かっていないと、子どもは正しい選択ができません。親として、日ごろから基本的な社会ルールやマナーについてきちんと教えてあげましょう。

たとえば、「順番抜かしはしない」「公共の場では騒がない」「元気にあいさつする」などを子どもに理解させていれば、子どものなかに「順番を抜かす」「公共の場で騒ぐ」「あいさつしない」という選択肢がなくなります。親が心配しなくても、子どもは自分で正しい判断を下してくれるようになるのです。

必要なときはサポートする

子どもが失敗したり悩んだりしているときは、親がきちんと手を差し伸べましょう。子どもが困っているときに「自分で考えなさい」などと言うと、子どもは「パパ・ママに見放されている」などと感じるかもしれません。

一緒に考えたり助言をしてあげたりすれば「パパ・ママはきちんと見てくれている」と感じるでしょう。放任主義の子育てでは、「親子の信頼関係」が非常に重要です。子どもの背後には常に親がいることをきちんと感じさせてあげる必要があります。

まとめ

放任主義の子育ては、子どもの自主性や自己肯定感を高め失敗をおそれないポジティブさを培うのに有益といわれます。

実践のポイントは親が手を出さずに見守ることですが、何でも好きにさせてよいわけではありません。親は子どもに社会のルールやマナーをきちんと伝え、その上で子どもの決定や選択を尊重しましょう。

悩んだり失敗したりする子どもの姿を見ると、ときにつらく感じることがあるかもしれません。しかし、親の忍耐や寛容さが、子どもの自立を促すカギとなるのです。