基本的には育児疲れや生活リズムの変化、睡眠不足などで忘れっぽくなるケースが多いようだけど、心配な物忘れもある?
「心配なのは、産後うつによる物忘れですね」と言うのは、日本医科大学名誉教授で、東京医療学院大学長の佐久間康夫先生。
「マタニティブルーでうつ病になる女性もいますが、うつは物忘れや覚えられないといった、記憶への悪影響を及ぼすこともあるのです」
そもそも人間は社会的動物であり、かつては集団で子どもを育ててきた。昨今は核家族で母親がひとりで子育てをするケースが増え、「生物の進化的には困難な状況になっている」と警鐘を鳴らす。
「うつ状態になると、自分の体の状態をきちんと認知できなくなり、赤ちゃんが泣いていても気づかない(忘れたい)状態になったり、自律神経が乱れて異常に暑さ・寒さを感じたり、味がわからなくなったり、休んで疲れがとれない慢性疲労症候群になったりします。こうした症状をともなう物忘れの場合は、周りに相談する、あるいは、心療内科を受診したほうが良いかもしれません」
●ママの物忘れは、無意識のうちに優先順位を付けているあらわれかも?
乳幼児期の子育ては、それまでの生活とは異なることだらけ。料理中に赤ちゃんが泣き出すと、中断してお世話をしなければいけないし、洗濯の途中でトイレに呼ばれるといったこともある。
赤ちゃん中心の生活になると、自分のペースでコントロールできないことが多いだけに、途中でやっていたことを中断され、忘れてしまうこともあるだろう。
ひとり目の子のときは、初めてのことがいっぺんにやってきてオーバーヒート気味になることもあるし、ふたり目以降は、複数の子どもの世話を同時にしなければならず、ついうっかり物忘れを引き起こすこともあるだろう。
ちなみに、都内の認知症専門医は次のように言う。
「そもそも、物忘れを心配している人は健常ですよ。心配な物忘れは、エピソード・体験そのものを忘れてしまうこと。例えば、買ってきたものを『自分は買ってない』と言ったり、人に会ったことを忘れて『誰にも会ってない』と言ったりするのが特徴です」
友だちへのメール返信は忘れてしまっても、赤ちゃんの離乳食をあげたかは忘れないし、泣き声には寝ていてもすぐ気づくはず。日々忙しいママは、無意識に「あまり重要でない」と判断したことを忘れているだけなのかも。
(田幸和歌子+ノオト)