●“勉強しなさい!”と叱責するのはまるで無意味
「子どもの将来のことを考えて、今締めておかなければならない時に落とす雷や、ちょっとしたゲンコツのようなものは、僕は否定しません。逆に、叱られずに育った子どもは、物事のけじめやストレス耐性が身に付かないまま大人になってしまうので、将来社会に出た時、上司に言われてすぐへこんだり、議論の場で戦えない人間になってしまいます。ただ、今の親御さんは、ちょっとしたことで怒鳴ったり、命令したり、クドクド叱って何とか言うことを聞かせようとする傾向にある。そんな必要はまったくないし、子育てをうまくやってきたご家庭では、ゲンコツを落とさずとも、ちゃんと親が背なかで威圧感を演出できるはずなのです。メリハリがない子育てをし、普段から子どもになめられている親にはそれが通用しないので、子が思春期を迎えたとき、どう接すればいいいのか悩むわけです」(高濱氏 以下同)
特に、「子どもが10歳になってまで、親が無理矢理勉強させようとしたり、“勉強しなさい!”と叱責するのは、まるで無意味」と高濱氏は語る。
「子どもを子どもと捉えてるからこそ、上から目線でそのような命令が生まれるわけです。10歳を過ぎたら、1人の大人として扱い、親ではなく、大人対大人の目線で話すことが大切。勉強をしてほしかったら、折に触れ、実際勉強をせずに過ごし、大人になって困っている人たちのエピソードを聞かせたり、今勉強しないとこの先どうなってしまうのか? 実体験に基づいたリアルなエピソードを話して聞かせるのです。思わず、頭のなかに映像が浮かび上がるリアルなエピソードは、100回“勉強しなさい!”と叱責するよりも、はるかに子どもたちの心に焼き付くはずです」
思春期は、親の真価が問われる時。愛するわが子が、「世のなかって、そんなに甘くないんだよね」「人生ってこんなに喜びに満ちていて、素晴らしいものなんだよ!」というリアルなエピソードを、思春期にいくつ聞けるか…。その刺激によって、子どもたちのなかで、自発的に勉強しよう! 資格を取ろう! ゲームばかりじゃなく、もっと外に出て人生経験を積もう! という思いが生まれるという。「社会の本音、大人の本音は、親しか教えてあげられないことの1つだ」と高濱氏は語る。
親として、これから羽ばたくわが子たちに、何パターンもの“生き方のモデル”を見せてあげること…。「勉強しなさい!」と日々カッカして精神的に疲労するより、遥かに楽で簡単な教育法なのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子)