●母性は本能じゃなく、子育ては生易しいものじゃない
都内の私立校に通い、同じ高校の彼氏と結ばれ、2児出産に至ったKさん。高校は自主退学し、現在、長男(2歳)と次女(0歳)、結婚して夫となった彼と、自分の実家で伸び伸びとした育児ライフを過ごしている。実年齢よりも、少しだけ大人びて見えるKさんだが、笑うと無邪気さも漂わせる美人ママだ。
「性教育は、小学生か中学生の学校の授業でちょっと習ったくらい。あまり印象はないですね。うちの場合は、母も10代で私を産んでいるので、家庭での性教育なんてまるでなかったし、そんな話を親とするとか、子どもを生むまでは考えたこともありませんでした。自分の子どもたちに性教育の話ですか? たぶん、恥ずかしくてできないんじゃないかな~(笑)。私自身、高校生になって彼を好きになって、結ばれたことに後悔はしてないし、子どもができたときも、正直あまりあわてなかったんですよ。母も全然冷静でしたよ(笑)。結果的には、結婚もできて今はとても幸せ。でも、しっかり避妊して、子どもができていなかったら、今頃学校に通って、受験とかしてたのかな~と考えたりもします」(Kさん)
幸せなのは、実家暮らしで多くの愛に包まれているから。「彼と2人きりでの育児は考えられないし、育児は、ばあばの協力がなければ成立しない」と笑顔で語る。
「元々子ども好きだったんですけど、1人で育児とかは…やっぱり無理ですね。彼はまだ学校に通っているし、勉強もあるから育児の手伝いは期待できない。だから10代でシングルで子育てとか、すごいな~って尊敬します。実際に母親になってみると、子どもってお金がかかるんだなと実感しました。今は、親への感謝の気持ちでいっぱいですね」(Kさん)
長年に渡り、性教育の現場に従事してきた「ぷれいす東京」理事の池上氏は、Teen Momについてこう語る。
「Kさんの場合もそうですが、10代のお母さんのそのまたお母さんも10代で出産している…というケースは非常に多いですね。なぜ、繰り返すのか…というと、お母さんは娘さんにとって、一番身近にいる生きた“性のモデル”であるからです。若いお母さんの下で幸せに、何不自由なく育った娘さんは、それが幸せだと感じているので、同じレールを走りやすくなる。家庭できちんと性教育をするか・しないかの問題ではないと思います。逆に、若いお母さんの下で家事で苦労させられたり、不遇な環境で育った娘さんは、反面教師で、若くして子どもを持つことに抵抗を感じるようになるかもしれません」(池上氏 以下同)
ここ数年、日本のセックスレスは深刻化し、思春期男子の性的関心とマスターベーション経験率が低下しているという調査も報告されているが、実情は、「単純に二極化しているだけだ」と池上氏は語る。
「昔から性的関心が強い子とそうでない子は二極化していて、今は、アニメやゲームなどの二次元枠が大きくなったため、その中間層が草食化に流れていっているという傾向にあります。男子が草食化しているから安心…という話ではなく、性に関心が高い男子は、昔と変わらずちゃんと一定数存在しているので、だからこそ、性別を問わず、家庭での性教育は大事なんだと。“経済的なことも含めて、親になるのは大変なんだ。母性は本能じゃない、子育ては生易しいものじゃないんだよ”ということを、きちんと家庭で教えてあげるべきです」
幸せは人それぞれ…いかなる方法であれ、しっかりと責任を取って、子どもを満たされた環境で育てることができるのであれば、Teen Momも悪くない。だが、そこに至るまでには想像以上の苦労と困難が待ち受けていること、子育ては、周囲のサポートなしになかなか成立しないということを、折に触れ、伝えていくべきなのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子)