深刻な影響を及ぼす“子どもの低体温”を改善する方法

第3回 低体温の子どもが増えている!
一般的に子ども体温は大人より高いと言われていますが、近年、平熱が36度未満という低体温児が増えているそう。その原因が生活リズムの乱れからくる“自律神経”の働きの低下だという。体温調節だけでなく、集中力の低下、疲れやすさ、キレやすさなどにも影響し、さらには学力や人格形成にまで関係してくるそう。

そこで、低体温の原因となる“自律神経”の働きを改善する方法を早稲田大学人間科学学術院の教授で医学博士の前橋 明先生に伺った。

「自律神経の働きを整え、体温異常を改善するためには、よく食べ、動いて、よく寝ること。朝明るくなったら起き、暗くなったら寝るという、人間本来の生活リズムに合った生活を送ることが重要なんです。当たり前のことですが、現代の贅沢かつ便利、誘惑で溢れる、夜型化した環境では、なかなかはそれを意識しなければ実行できないのが現状です」(前橋先生 以下同)

早起き

●低体温を改善する4つのポイント

改善ポイントは次の通り。

1)通園・通学の2時間前には起きて、朝食をとり、家で排便する

「十分な食事をして排便してゆとりをもって出かけるためには、保育や教育の開始(授業開始)時刻の2時間前には起きておくのが理想です。朝日が差し込むように薄いカーテンにしたり、遮光カーテンに少し隙間をあける工夫もおすすすめです。食事は、野菜を含めて量をしっかり摂ること。質と量が少ないと、排便にもつながりません。朝の排便も、とても重要です。実は、排便のある子の方が、その日に力を発揮できるというデータもあります」

2)体を十分に動かす。特に午後15~17時はゴールデンタイム

「幼児期は午前中にあそぶだけで運動量は足りますが、年中さん以降は午後あそびも必要になります。特に、一日のうちで一番体温が高くなる15時~17時くらいに積極的に体を動かすことで運動エネルギーを発散させ、情緒の解放を図っておくことが夜の自然な入眠を促します。また、あそびは少し汗をかいてスリルのような危機的状況を作れるドッジボールや鬼ごっこなどが体力を向上させ、自律神経の働きをよくするためには効果的でおすすめです」


3)夕食をしっかり食べて、遅くても9時までには寝る

「夕食が遅くなると、就寝時刻も遅くなるので、なるべく18~19時までに夕食時間を設定しましょう。夜間の睡眠は、少なくとも10時間が理想です。寝るときは、環境を暗くし、夜を感じさせて眠りへと導きましょう。夜遅くまでテレビやゲームをしていたり、寝るときにテレビのついた部屋など、光刺激があっては眠れません。家族の協力も必要ですね」


4)体温調節機能を鍛えるために、エアコンは適度に

「現代は赤ちゃんのときからエアコンの生活を送るため、体温調節機能が鍛えられません。特に夜などはつけっぱなしで寝るのではなく、寝着いたら消し、例えば冬なら寒さ、夏なら暑さで自然に目覚めるようにしましょう」

これらすべてをいきなり改善する必要はないという。

「よく悪いことは連鎖すると言いますが、逆に良いことも連鎖するんですね。ひとつ改善すると、その効果で次々に改善できていくものです。まずは、ご自身が“これならできる”というものをひとつ選び、その一つから改善してみてください。“1点突破 全面改善”をめざしましょう!」

まずはできることから! お子さんの成長期の大事な時期に、生活リズムを整え、自律神経をしっかり鍛えてあげましょう。
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

前橋 明
前橋 明
早稲田大学人間科学学術院教授・医学博士
子どもの疲労と体温との関連・乳幼児の生 活リズム・保護者の育児疲労と育児支援に ついて、主に研究。そして、研究で得た知 見を児童福祉や保育、教育に応用し、アジ アの子どもたちの健全育成について検討す るとともに、子どもたちの抱える健康福祉 上の諸問題に対処するため、幼少児の健康・ 生活習慣実態調査をアジア地域で展開している。
子どもの疲労と体温との関連・乳幼児の生 活リズム・保護者の育児疲労と育児支援に ついて、主に研究。そして、研究で得た知 見を児童福祉や保育、教育に応用し、アジ アの子どもたちの健全育成について検討す るとともに、子どもたちの抱える健康福祉 上の諸問題に対処するため、幼少児の健康・ 生活習慣実態調査をアジア地域で展開している。