病院で処方されたり、薬局やドラッグストアで見かけることも多い「ワセリン」。保湿剤として使ったことがあるという方も多いかもしれません。実はワセリンは、毎日の肌のお手入れをはじめ、さまざまなシーンで活躍する万能アイテムなんです。今回は、ワセリンの特徴や効果、便利な使い方についてご紹介します。
ワセリンってそもそも何?
ワセリンは、皮膚の保湿に効果的な保湿剤です。
保湿剤といっても、ワセリン自体に皮膚に水分を与える力はなく、皮膚をコーティングすることで皮膚から水分が失われるのを防ぐために使われます。
使用されてきた歴史も長く、赤ちゃんから大人まで使える、副作用が出にくい安全なお薬とされています。
原料はなにからできている?
ワセリンは、石油由来の炭化水素類の混合物を脱色して精製したものです。
「石油が原料」と聞くと、肌に良くないのでは…?と心配する方もいるかもしれませんが、そもそも石油自体が天然由来の成分です。また、これまで長い間使われてきて、安全性に問題がないとされているお薬ですので、石油が原料だからと過度に心配する必要はありません。
肌トラブルや健康被害の可能性は?
石油から生成されていることから、誤って飲み込んでしまったり、肌荒れになったりすることがないか不安に感じる方もいるかもしれません。
基本的には前述の通り安全性に問題はありませんが、もしワセリンで起こる可能性のある肌トラブル(副作用)があるとすれば、「接触性皮膚炎」、いわゆる「肌のかぶれ」です。特に純度の低いものを使うと、稀に副作用が生じる場合もあります。このような症状があらわれた場合には使用を中止し、症状がひどい場合は皮膚科を受診しましょう。
また、ワセリンは油分を固めたようなお薬なので、少量を飲み込んだくらいであれば、ひどい場合でも、脂っこい食べ物を食べ過ぎて胸焼けをおこしたような状態になったり、下痢になったりする程度で心配はいりません。
赤ちゃんにもよく使われるお薬なので、赤ちゃんが誤って口にしてしまうことを想定し、少量なら口にしても心配のない成分で作られています。ただし、飲み込んだ赤ちゃんの様子がいつもと違う場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
ワセリンに種類はある?
ワセリンは、純度の違いによって、「黄色ワセリン」「白色ワセリン」「プロペト」「サンホワイト」の4種類に分類されます。
純度については、黄色ワセリン<白色ワセリン<プロぺト<サンホワイトの順で、右にいくほど高純度(不純物が少ない)になります。
それぞれのワセリンの特徴は?
黄色ワセリンの精製度が低いということは、できる限りプロペトやサンホワイトを使った方がいい……?と思ってしまうかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
一般的にワセリンは高純度の物ほど値段も高くなる傾向にあるため、特に敏感肌でない方は、必ずしも高純度の物を使わなくても、お財布と相談して選べば大丈夫です。
ここからは、それぞれのワセリンの特徴について解説していきます。
黄色ワセリン
4種類のワセリンの中では、一番純度が低く、不純物の含有量が多いワセリンです。
黄色っぽい色味をしているのが特徴で、手に入りやすく安価ですが、敏感肌の方やアトピー性皮膚炎の方、赤ちゃんは刺激やかぶれ、アレルギー反応を生じる場合があります。そのため、現在は医療機関ではほとんど使用されていない種類のワセリンです。
白色ワセリン
黄色ワセリンの純度を高めたものです。
一般的にワセリンというと白色ワセリンのことを指す場合が多いほどメジャーなお薬です。
安価な割に、ある程度の純度もあるので、純度に特別なこだわりがない場合は、白色ワセリンを使うのがおすすめです。医療機関でも頻繁に使用されています。
特に、敏感肌の方、アトピー性皮膚炎の方、赤ちゃんは黄色ワセリンではなく、白色ワセリン以上の純度のものを使いましょう。
プロペト
白色ワセリンの純度を高めたものです。
目の近くなどデリケートな部位に使用する場合や、白色ワセリンでは皮膚がかぶれてしまう人にはプロペトが使われます。こちらも、医療機関でも使用されています。
サンホワイト
プロペトの純度を更に高めたものです。
アレルギーのパッチテストに使用されるほど刺激が少ないので、プロペトでも刺激があったり、かゆみやかぶれが出てしまう人に使われます。
ただし、サンホワイトは医療機関で使う場合にも健康保険の適用外のため、ほかのワセリンに比べると高価です。
上記のとおりワセリンには大きく4種類ありますが、純度が違うだけで、保湿力自体に違いはないとされています。ではメーカーや種類、それぞれ保湿以外の面で違いはあるのでしょうか?
薬の分類としては同じになるの?
まず、分類と販売の方法が種類によって変わります。
黄色ワセリンや白色ワセリン、プロペトについては、医師の指示により使われる「医療用医薬品」の他、「第3類医薬品」に分類される市販薬としても販売されています。
もっとも純度が高いサンホワイトは、病院で使われる場合も保険はきかず、市販品を購入することになります。
チューブや缶タイプはどう使い分ければいい?
ワセリンは、商品によってチューブタイプや缶タイプ、ボトルタイプなど形状がさまざまです。名称が一緒なら、メーカーごとに内容の違いはありませんが、用途に合わせた容器を選ぶことで使いやすさがアップします。
全身に一度にたくさん使うならボトルタイプ、リップクリームとして唇の保護などに使いたい場合はコンパクトなチューブタイプがおすすめ。指で塗りたい人は、小さな缶に入っているタイプも使いやすいです。塗りたい場所に合わせて、適切な容器に入っている商品を選びましょう。
香料やビタミンE入りのワセリンもあるけど……
香料やビタミンなど、その他の成分が配合されているワセリンも多くあります。
これらはアロマ効果でリラックスできたり、ビタミンE配合で肌の新陳代謝を促進したり、尿素で角質を柔らかくしたりと、ワセリンだけでは得られない効果を得られます。
ワセリンの保湿効果だけでなく、その他の効果も得たい人は、それぞれにあった成分が配合されている商品を選ぶのがおすすめです。
ユニリーバのヴァセリン(Vaselin)は別物?
また、よく勘違いしやすいのですが「ヴァセリン」と「ワセリン」は別物です。一般的にワセリンは白色ワセリンを指しますが、「ヴァセリン」はユニリーバ・ジャパンの商品名で、中身は白色ワセリンではなく黄色ワセリンです。こちらは、化粧品として販売されている商品なので、間違えないようにしましょう。
サンホワイトのP-1とY-1はどう違う?
サンホワイトはさらに2種類に分かれ、しっかりとした厚めの使用感の「P-1」と、伸びてベタつかないさらっとした使用感の「Y-1」の2タイプが販売されています。
どちらも効果に違いはないので、好みの使用感のものを選べば問題ありません。
配信: トクバイニュース