「きょうだいが憎い! カインコンプレックスを生みやすい環境と親の言動」

第2回 カインコンプレックスを生まない子育て
兄弟姉妹の間で起こる憎しみや嫉妬の葛藤を“カインコンプレックス”といいます。差別的に親の愛情を受けて苦しんだ原体験は、きょうだい以外の人間関係にも投影されていくというから深刻。では、カインコンプレックスを生みやすい環境、親の言動とは?
東京学芸大学准教授の松尾直博先生に、おもなケースを挙げていただきました。

(1)きょうだいいずれかが容姿、勉強、スポーツ・芸術などの才能に優れているケース

どちらかのきょうだいが突出した才能や能力を持っている場合、どうしてもそうでないきょうだいは親からも世間からも比較されてしまいがち。

「突出した才能や能力を持っている子の場合は、親はもちろん世間からも注目され、称賛されます。でも、そうでないきょうだいは、ただでさえ世間から比較の目で見られてしまうのに、親からも比較・差別されてしまったら逃げ場がありませんね。誰がなんと言おうと、親こそがその子の個性やいい部分を称賛し、認めてやることが大切です」(松尾先生 以下同)

(2)親の価値観できょうだいを差別・比較してしまうケース

親の価値観で優劣を判断してしまうケースもあるという。

「親御さんのなかには、自分の価値観が優劣の判断基準になってしまう場合があるんです。というのは、自分自身がスポーツが得意だから、子どももスポーツが出来なければいけない。と、スポーツができる子ばかりを称賛し、スポーツが苦手なきょうだいと比較してしまうんです。例えば、その子は絵を描くことや歌うこと、文章を書くことなど別の才能があっても、“そんなものできたってしょうがない”と、認めてやらない。そういうケースもあるので、親はぞれぞれの個性を認め、決して親の価値観できょうだいの優劣を判断しないように気を付けてください」

カインコンプレックス

(3)二人きょうだい、年齢が近い同性のきょうだいはこじれやすい

二人きょうだいは、問題がこじれやすいという。

「親御さんがどちらかに注目すれば、もう一方は注目されない。といったように、二人きょうだいは利害が対立しやすいんですね。しかも、他のきょうだいがなだめ役にもなれない環境なので、とてもこじれやすいです。ただし、きょうだい関係はそれぞれですので、三人きょうだい以上でも、二人きょうだいよりもこじれることはあります」

さらに、類似性がより強い同性・同世代のきょうだいは葛藤が大きいという。

「年齢が離れたきょうだいや異性の場合は、比較対象になりづらいですし、本人たちもライバル意識が起こりにくいです。逆に類似性が強い同性・同世代のきょうだいの場合は、できることや習い事など共通する点が多いので、本人たちも意識してしまいますし、親御さんもつい比べてしまうんですね」

(4)きょうだいが、なんらかの障害や疾病を抱えているケース

カインコンプレックスは、こんな意外なケースにも影を落とす。

「きょうだいのどちらかが障害や疾病を抱えている場合も、カインコンプレックスを生むことがあります。親御さんは障害を持っているお子さんにかかりっきりになり、周囲の人も気遣います。きょうだいもそれを理解して“障害があるんだからしょうがない。お母さんも大変だし…”と、どんなに寂しくても我慢します。その我慢があるとき爆発してしまうんです。子どもはどんな事情があろうと、親の愛を求めています。そのことをしっかり理解し、日ごろ我慢している子には、特別な時間を作ってあげるなど、フォローを忘れないでください」

このように、気づかぬうちに親がきょうだいを追い込んでしまうことも。もし、環境や言動に心当たりのある方は、ぜひ今日から接し方を改善してみてください!
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

松尾直博
松尾直博
東京学芸大学教育学部准教授。博士(心理学)
児童臨床心理学、スクールカウンセリング等 を専門領域とし、臨床心理士、学校心理士、 特別支援教育士スーパーバイザーとして、ま た幼稚園、小学校、中学校などでカウンセラ ーとしても活動している。  
児童臨床心理学、スクールカウンセリング等 を専門領域とし、臨床心理士、学校心理士、 特別支援教育士スーパーバイザーとして、ま た幼稚園、小学校、中学校などでカウンセラ ーとしても活動している。