「まず、親御さんは常に励ます存在でいてほしいということです。例えば結果や成績が悪かったとき、決して叱ってはいけません。なかには叱られて発奮する子もいるでしょうが、それはあくまで少数派。こんなしぼんだ状態のときに叱られたら、ほとんどの子どもはよくない状況から衝動的に逃げようとしてしまいます。結局、モチベーションが下がり、挫折してしまうのです。わが子の潜在能力を引き出したかったら、とにかく励まし続けることです。親や指導者はそれが仕事なのです」
そう話すのは、臨床スポーツ心理学者で人気番組『ホンマでっか!? TV』でも活躍中の児玉光雄先生。
さらに、効果的な励まし方についても教えてくださいました。
「間違ってもお子さんの能力のなさを言葉にしてはいけません。“才能がない”や、“頭が悪い”など、NGワードです。あくまでも、“今回の結果はよくなかったけれど、努力が足りなかっただけ。これをバネにまた頑張ろうね!”これでいいのです。また、物事の捉え方のコツとしては、良いことは内的な要因、つまり“自分が努力したから”と自分の成果にする。よくないことが起こったときは“外的な要因”、つまり“相手が強かったから”“問題が難しかったから”などと捉えると、気持ちが吹っ切れて落ち込まずに前に進めます。さらに、よいことは永続的に持続する、よくないことは一時的なもの、消えてしまうものと捉えることもお子さんのモチベーションを保たせるコツです」(児玉先生 以下同)
さらに、お子さんが持っている力をここ一番で発揮させるためには、実はオフを充実させるてやることがとても重要だという。
「私は、アメリカを代表するスポーツ心理学者のジム・レイヤー氏のもとで学んだのですが、彼はこう言っています。“人にはオンとオフがある。大人なら仕事、子どもなら学校や勉強、習い事”などがあり、そのオンに意識を注ぎすぎる傾向がある。しかし、大事なのはオフなんだ”と。つまり、いかにオフにリカバーしてエネルギーを蓄えるかが、オンに本来の力を発揮するためには重要なんです。ぜひ、親御さんは、お子さんの食事や睡眠、遊ぶ時間といった日々のオフを最高のものにしてやる。そのバックアップを大事にしてください」
人生は、まさに“ここ一番”の局面の連続。将来お子さんがそんな社会のなかで生き抜いていける人間になるために、ぜひ親御さんに常に心がけてほしいことがあると児玉先生は話します。
「日ごろから、“○○しなさい!“とお子さんに指示するのではなく、常に質問を投げかけて、自分で考えて行動させるように習慣づけてください。ドシャームという心理学者は人間を将棋などに例えて二つのタイプに分けています。自分で行動を決めて自発的に動ける“指し手型人間”と、指示されたことは忠実にできるけれども、自分でプロデュースできない“駒型人間”。これからの時代は、指し手型人間でないと立ち行かないといわれています。ここ一番に強い人間になるために、どんな状況下でも即座に自分で考え対応できるスキルを小さいころから磨いてあげてください」
日々の親御さんの接し方、声かけ次第で、子どもの可能性は無限大。お子さんが逞しく、頼もしく生きていけるように“親だからこそできるサポート”をしてあげてください。
(構成・文/横田裕美子)