●「昔はもっと違ったのに!」と腹が立ってしまう娘たち
A子「うちは、私が仕事をしていることもあって、長男が生まれてからずっと、母のフォローで仕事と育児を両立してきました。とてもいい親子関係だったんですけど、母が大病して一緒に住み始めた途端、家事のやり方が大きく違うことがお互いにストレスになって…。母は神経質で私は大ざっぱだから、最近はケンカばかりしています」
B子「わが家は私が1人っ子なので、結婚と同時に、旦那が実家に引っ越してきてくれたんですね。3人とも仕事をしていたので、子どもが生まれるまではうまくいっていましたが、長女が生まれて、母がパートを辞めた途端、歯車が壊れ始めたというか…。私の育て方が何かにつけて気に入らないんですよね」
A子・C子「わかります~(笑)」
C子「うちの母は、元々は穏やかな性格だったんだけど、歳をとるにつれて頑固になって…。一度言い出したら絶対に譲らないので、そんなわからず屋になってしまった母を見ていると悲しくなって、つい真っ向からぶつかってしまいます」
A子「知らずのうちに、若い頃の母と比べてしまうんですよね。“昔はもっと違ったのに…”と悲しくなるし、腹が立つ」
B子「物忘れが多くなったり、物を失くしたり…もう70を超えているししかたがない…とは思うけど、どうしてもイライラが隠せない」
C子「自分の更年期も重なってか、イライラすると母にあたってしまうことも多いので、今はなるべく距離を置いて、自宅に帰る前に“命の母”を飲むようにしています(笑)」
A子「うちの母は、私への干渉もひどい。『どこにいくの? 何時に帰るの? 傘は持ったの?』と。『もう小学生じゃないんだから!』と学生時代のように反抗してしまうこともよくあります」
B子「うちは、孫に甘いのが腹立つんですよね。娘のテストの点が悪いと嘆いていると、『あなたの方がもっと悪かったわよ』とか平気で娘の前で言うから、親の面目丸つぶれ」
C子「実母あるあるですね(笑)。でも、どんなに争っても、そこは親子だから、わりと翌日はお互いケロっとしてるかな~」
B子「仕事から疲れて帰って来て、部屋に入った瞬間、『今日、あのテレビでこんなことをやっていてね…』とか、母のどうでもいい話を聞いてあげられるほど、今の私には余裕がない。“一緒にいても、優しくできないなら意味がない”と思うから、疲れている時は、自分たちの部屋に行ってリラックスするようにしています」
家族問題に詳しいNPO法人「ファミリーカウンセリングサービス」代表の村田雅春氏は、この対談を受けてこう分析する。
「まず、なぜ人は身内に厳しいのか…というところからお話しますと、人間は他人の話を聞く場合、7~8割は内容を聞き取ろうとするので感情は2~3割しかついてこないけれど、身内の話になると、その逆の割合になってしまう。つい感情が先走るので、『そんなことまで言わなくていいでしょう!』という争いにまで発展してしまうのです。話を真面目に聞き過ぎる親切心こそが、逆効果になってしまう。ですから、お母さんの話を聞く時は、しっかり聞こうとせず、話を合わせてあげる…それだけでいいんです。映画を観るように、客観的に聞く。同じ部屋で同じ息を吸ってあげるだけでいい…そう思うだけでも、実母との同居はラクになります」(村田氏 )。
実の親子であるからこそ、遠慮がなく、衝突しやすいのもまた実情。子どもが生まれてママとなり、守るべき家庭ができたなら…親子で良好な関係を保つためにも、ある程度の距離感が必要なのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子)